レインズ・デイズ・アフター番外編④レイン・クルーズ悠斗ファン編(前編)


そりゃあ裕太はきれいだと思う。
でもきれいすぎて。
だから悠斗。
親近感持てる。
回れって言われて戸惑った顔した悠斗。
素早すぎる忖度のティアーズで、そのうぶさが群を抜いていた。
ことによると、裕太もそうだったのかも。
そう思えるほどに、裕太は悠斗を大事にしていた気がする。


クルーズの話を聞いたとき、悠斗ファンはみんな嘆いた。
絶対五十五十になんてならない。
行きたい裕太ファンが押し入ってくるだろう。
悲しいけど絶対そうなる。
一人でもたくさん生き残ろう。
悠斗ネットワークは誓い合った。


蓋を開けたら三十三人だった。
まあ思ったより残れた。

人気負けててごめん

って悠斗謝ってくれるけど、あたしたちから言わせれば、

押し上げてあげれなくてごめん

で。

お詫びも込めて、今回はめいっぱいサービスさせてもらいます。

そう言って悠斗はA4くらいの紙を配った。

俺とこんなことしてみたい、こんなこと話したい、みたいなの、書いてみてね。
出来るだけ叶えるから。

わお!
すごすぎる!


一番年若いコノちゃんが、

ダンス教えて/

次に若い真奈ちゃんが、

ダンス見せて/

だったので、即席ダンス教室がスタートした。
難しいステップはやらない。
ボックスステップとそのバリエーション。
誰でも出来るステップだけど、楽しい。
そしてそのシンプルなボックスステップも、悠斗にかかると華麗でおしゃれで。
楽しかった。
あたしたちはささやき交わす。

楽しかったね。
近かったね。
裕太組、羨ましそうだった。

悠斗組でほんとによかった…


きょうはー。
三十四人連結伝言ゲームしまーす!

三十四人?
ああ、悠斗入るからか。
あたしの仲良しのつぐちゃんがスタート。
悠斗からなんかヒソヒソされてる…
つぐちゃんすごい赤くなってる(笑)。

六人越しにきた内容は、

悠斗パンツ聞いたら水玉だって

嘘だああああ!
それでもまあ、聞いたままを次に伝えてみる。
ぐるっと回って悠斗に戻った伝言は、

裕太水玉パンツ嫌いなんだって

水玉パンツ残ってる割に裕太ネタになってるううう。
でもって正解は、

YOUパンチ効いたMCやんなきゃね

マムン語でした。


次のイベントは仮装コンテスト。
それも異装コンテスト。
男性は女性に、女性は男性に仮装して 姸を競う。
悠斗も(下手な)女装してくれて、胸のアンパンがずれるは落ちるはもうボロボロ(笑)。
で、そろそろ優劣、ってなったとき、その場に裕太ファングループが乱入してきたのだ。

裕太いません?

なにそれ??

今私たち『裕太を探せ』やってるんですけど、どこを探してもいないんです!

だからって他のイベ会場荒らす?
みんなちょっとざわざわなってたら、きれいな女性がいきなり立ち上がった。

「それってー、私たちには関係なくありません?」

そうよそうよ。
みんなちょっといろいろ腹に据えかねてたから、その人の発言にはちょっと胸内がスッと…

あれ?

この美女誰?
あたしら三十三人、もう一種のクラスメートみたいなってて、だいたい顔は見知ってる…
誰?
待って似てる、え?やだ、
もしかして??


裕太みっけ!


裕太さん!??


裕太なの!!?


えええええええええっ??


美女はニヤって笑って、ドレスの裾からげて、あられもない姿で逃げ出した。
裕太グループの面々も、ドタドタあとを追っていく。
私たちはあっけにとられ、次の瞬間わっと噴いた。

なにあの美人ぶり。
つか裕太、どんだけ悠斗のそば居りたいん?
コンビ愛すごすぎー!

ここで悠斗がこうくるわけで。

優劣発表どころじゃなくなっちゃったんで、この際企画変更。

いま、あなたはなにをみたのかーーーー!?

とばかり、悠斗はあの、女装裕太を描くことを提案し、同時に、

裕太にあって、悠斗(俺)にないものなんだろう?

って出し合うことに。
即席目撃似顔絵展と、今後の課題を話し合う場に変えてしまったのだった。


これの真意はあたしが思うに、悠斗は異装コンテストに、優劣美醜つけたくなかったんちゃうかなと。

つぐちゃんの意見に、大半の斗(ト)ファン~この頃にはあたしたちは、自ら“斗ファン”と名乗りあうようになっていた…ちなみに裕太ファンのことは“太(タ)ファン”と呼んでいた~は大いに頷きあっていた。
悠斗って、そういう人だから。
ティアーズは美形男性の集まり。
その分美しさを鼻にかけるようなやつもいる。
ファンのこと、バカにしたり、侮ったり。
でも悠斗はそういうのしない。
そんな悠斗が異装の優劣つけるとは思わなかったので、このオチは結構好ましかった。

ちなみに…女装裕太の目撃似顔絵は、どれもそれこそ力作ぞろい。
三十三、いや悠斗も描いて三十四。
悠斗は結構なヘタッピだった。

それでも地球は回っている