HELLO!〔十六夜さんに捧げる一作〕


世界と私の詩


世界が私の一部ならば
私は世界をみることができるのだろうか

私が世界の一部ならば
世界は私を感じることができるのだろうか

世界が私の隣にいたら
私は世界を受け入れることができるのだろうか

私が世界の隣にいたら
世界は私が隣にいることを喜ぶのだろうか

世界と私はひとつになれない

私と世界はちがう存在

世界と私は融和しない

けれど寄り添うことはできる存在



融和しないのですね


と先生は言い、


融和しません


と私は返した。
先生はため息をつき、それでもB°(マル)をくださった。


Aでもよかったのですが、あなたの頑なさが、ちょっとでも和らぐといいと思ったので


よけいなお世話だと思った。
こういう人が多すぎる。


無事だったか波乃(はの)!
冷酷女史に頭からバリバリ食われたかと思ったぜ!


有川恒。
ガサツな大男。
私が好くのはこういうタイプじゃない。
戸崎。
戸崎令。
何で今いない。
何で・・・


メツェンナが攻められた4日後には令はもうネセウにいた。
かつてネセバルと呼ばれた首都。
いまはネセウに呼び変えられている。
そう。
ネセバルは侵略国が勝手にそう呼んでいただけだったのだ。
誰もがメツェンナの防衛を願っているが、侵略国は手ごわく小ずるい。
メツェンナの老女を祖母に持つ令は、無差別爆撃、砲撃等の報道をみて、じっとしていられなくなったのだ。
気持ちはわかる。
でもバカだよ令。
あなた一人で何が出来るっていうの!
行くべきなのは有恒みたいな脳筋よ。
あなたじゃない!

いらいらと日々を過ごす。
無事かどうかもわからない。
世界は私に全容をみせないのに、私は世界にすべて見透かされているのだ。


あんまりシンコクになるなよな


深刻と漢字で書いたこともなさそうな有恒が私を映画に誘う。
もちろん行かないけど。

ここに在るのは日常そのもの。
そしてここにいる以上、私も日常の側に在るのだ。
有恒があるいみ壁になってくれてるおかげでほかのおバカは寄ってこないでくれてるけど、学部で4人しかいない女子だ。
解禁されたと感じたら、誰も遠慮はしてくれないだろう。
そうなんだ。
学部全体118人男の子いても、私がゆらぐのは令にだけ。
令のいない大学(がっこう)に、私は価値を見いだせない・・・・・


いきなりlineがピコンと鳴った。



空港には埃まみれの二人連れがいた。
すらりと細いクォーターと、小柄で金髪のメツェンナ美人・・・
お年召してるのにおきれいだ。
令がイケメンなのも頷ける。
その令は、三角巾で腕吊ってる。
骨折!?
腕?肩?
ああもう・・・バカバカバカバカバカ!!


距離あるのに、怒鳴ってしまった。
怪我して!
怪我して!!
どうして無事でいないのよ!

気づいたら目の幅で泣いてた。
こどものように手の甲で涙を拭っていた。


バカだなあ


抱き寄せてきた令にされるがまま、胸に頭を預けてしまったが、だめだめ、私、メツェンナ美人に挨拶しなきゃ。
気丈をまとって正対する。

Ласкаво просимо до Японії

(Laskavo prosymo do Yaponiyi)

(ようこそ日本へ)


メツェンナ美人は破顔した。


ハノ!


え?もう私の名を?


令が笑って首を横に振る。


英語で言うとHELLO。


ああそこ。
でもこれから私のおばあちゃまになってくださるかもしれないのだから。
私も心を込めて言った。

ハノ!




※ 作品冒頭の詩は、十六夜さんのオリジナル(https://note.com/izayoi_2019/n/nc0a55acb129a)です




この企画に、ご参加いただきました

ありがとうございました

興味ある方はお声かけください

まだまだ書きますよー


それでも地球は回っている