猫とあなたの心地よい距離

猫とあなたの心地よい距離①


□ 地域猫は幸せ?


さくらねこ ~地域猫活動を横目にみて、ちょっと鼻白んだ時に書いた掌編~


目が覚めた
おなかがいたい
腹部

なにこれ
いたい
耳…


端が切れていた


なに

どういうこと

どういうこと?


外へ連れて行かれて
いきなりほおり出された…

うちのそば

うちに飛び込んで


隠れた

あれから特に変わったことはない

ただ


注意して見ると

耳に傷ある人多い

男は右耳
女は左耳

どゆこと?

数十年後

子孫のない私たちは


ニホンオオカミのように絶滅した


***


人間のあなたがされたら、どんな気分でしょう。
痛いですよね。
動転しますよね。
印された耳の端の形が桜の花びらのようだからさくら猫?
猫たちは、インフォームドコンセントされてないのだけど…

それでもさくら猫活動は、活動者の皆さんの、“善意”のもとに続けられています。
飼い主のいない猫を、

地域で飼育する猫

として位置付け、地域全体が責任を持つ……………

え?

いつの間にか責任を分担させられてた??


□ 猫に限らず生き物を飼うということは、命の責任が伴うこと


空前のペットブームである昨今は、やれアメショーだ、やれマンチカンだと人気猫種が言われますが、アメショーと略される、アメリカンショートヘアの平均寿命は約14年。
マンチカンなど10年ちょっとしかないそうです。
それでもやっぱり10年は長いし、10年ピタリで寿命が尽きるわけでもありません。
そんな歳月をフル守りきる度量は私にはないと思うので、喉から手が出かねないほど猫が好きですけど、一度も飼わないできたのです。
ところが七年ほど前、隣家が猫を飼い始めてしまいました。
野良を餌付けてしまったのです。
それも四匹も!
隣家は老夫婦だけで暮らしています。
つまり人間は二人だけ。
そう。
隣家は猫の方が多いのです。


□ 老夫婦は犬飼いで、猫の飼い方は全然知らなかった


このあたりの町内会は、ボスが幅をきかせています。
うちや隣家は何かとボスに、気兼ねして暮らしてます。
隣家の奥さんは猫たちが、近隣に悪さとかしないように、猫たちにこれでもかとキャットフードを与えまくってましたが、猫は狩りをする生き物。
何かと何かをしでかしたらしく、突然彼女らが現れたのです。
それは地域猫推進活動家さんたち。
ボスが保健所に通報し、保健所がこういう事例を嘱託しているらしい彼女らに連絡を入れた、それでご出動と相成ったようでした。


□ 彼女らは言った、「地域猫という考え方で、この子たちを受け入れてあげてください」と


誰も別に同意せず、さりとて誰も保健所へ絶対引き渡せとも言わず、結局四匹は老夫婦が、正式に飼い主となって幕。
四匹は活動家さんがたに連れ去られ、避妊手術され、老夫婦のもとに戻されてきました。
費用は七万ほどだったそうです。

奥さんは後で言っていました。
餌さえ与えといたら満足すると思ってたの。
でも、あげてもあげても食べるのよ。

で、あんなに大きくなっちゃったんですね。
避妊後はもっと食べますよ?

えーっ!???

奥さんは目を白黒してました。


□ NTR活動


連れ去られ、避妊手術され、もとの場所に戻される。
地域猫活動家さんたちは、精力的にこの活動を推進しています。

捕獲(Trap)のT
去勢(Neuter)のN
返還(Return)のR

でTNR。
この活動を通して、野良猫の繁殖を防いでいるのだそうです。
飼い主のいない猫の数を抑制し、一代限りと断って、地域にその存在を許してもらう形…

今隣家の猫さんは三匹だそうです。
一番の器量良しが誰かに取られたそう。
(避妊してもらった上で取るなんて、なかなかの悪知恵ですよね汗)

幸せならいいんですけどねえ。

奥さんはため息をついてました。


□ NTR。理屈はわかる


でも私が猫なら、ただひたすら怖いだけだと思います。
何かが起きた。
よくわからないけど、

耳も痛い……

あれをさくら耳と言い、桜の花びらみたいで可愛いという~だからさくら猫だと言う。そういう感性の童話作家さんがいるのです現実に~、そういう神経がどうしても癇に障るのです。
繰り返しますが、彼女らは猫たちに、インフォームドコンセントしていません。
いえ、してたとしてもです。
これは正論という名の横暴だと、私は思ってしまうのです。



猫とあなたの心地よい距離②


□ 猫好きの一部にありがちなこと


自分が猫が好きすぎるので、絶対飼わないと決めてる私はたまに、

ちょっとなー…

と思う“猫好き”さんに出会うことがあります。

一番苦手なのは、猫たちの気持ちより、自分の“好き”を優先する人たちです。
猫は基本的に、

自分が望まない時には触れられたくない生き物

なのですが、そういう“猫好き”さんは、わーっと寄ってっていきなり抱き寄せてしまいます。
ムツゴロウさんの、

よーしよしよし!

みたいに猫さんの全身もみくちゃにワシワシしちゃったり。
猫さんが反射的に跳んで逃げられないほど素早く、迷いなく抱かえるから出来る芸当で。
猫さん必死にもがきますが、それすらそういう人は、

相手が自分に愛嬌振りまいてる

みたく思い込んでます。
その口からは、

かわいー!
かわいー!
めっちゃかわいー!!

が連呼されます。

猫さんの瞳に映し出される怒気

も、

背中を丸めてフーッと威嚇する本人~本猫ですね~の、強い不快や怒りや恐怖

も全然気づかず“可愛がり”続け、あろうことか、

この子私になついてるから大丈夫ー

などとさえのたまうのです。
何が大丈夫なんだか(怒)。


□ 猫は猫好きがわかるのよねー


…みたく言う人もけっこういますが、そういうことを簡単に口走る人ほど、猫の心や気持ちはお構いなしだったりで、とどのつまりはまさに突然、シャッ!と爪とか見舞われるわけです。
そのうち猫さんは、あなたが来るタイミングを覚えて、その時間帯わざわざ選んでふいっと留守するようになります。
屋内飼いの子ですら、見つからない場所を選んで隠れしたりしますよ。
猫さんたち、ほんとに厭なんです。
なのにその手の人たちはまだ言います。

おっかしいなー。
最近△△ちゃんと会えてない。
私あの子とめっちゃ仲いいのになー。

思わず沈黙したくなりますよね。
こういうお友達いませんか?
ま、まさか…ご本人??

最近△△ちゃんに会えてないんだよねー。

なんて口走ってるそこのあなた。
どうかこのタイプでありませんように。
そうでないことを心から祈ります。


□ 補足。
  不安に思ったのか、こないだ友人が電話してきた…


友 あのね…

(とほんとにおずおずでした)

友 うちのマンションの近所に出没してるコなんだけど、今年の年初あたりから、よく自動ドアのところにいるんだ。
  待ち伏せっていうか…

私 人と一緒だと、ロックも通れるの知ってんだね。
  賢いじゃん。
  自動ドア係はあなただけ?

友 私だけじゃないけど、なんとなく人は選んでるっぽい。
  私んちの階までついて来る。
  私のすねにすりってしたり、逆に階段の壁とか、角々とかにもすりって。
  一度もエサあげてないんだけど、すりっすり来てくれるのはそれなりに、私のこと好きだからだよね。

私 それはどうかなー。
  嫌いな相手には確かに寄らない。
  怖い思いさせられた相手にもね。
  だからって、絶対好きとかは言えないよ。
  言えるのはせいぜい、嫌われてはない、怖がられてもないって、そんなとこまでだね。

友 ……



猫とあなたの心地よい距離③


□ 友人の電話・続き


黙り込んでしまった友人がちょっと案じられて、私はそのコの行動パターンを、彼女に確認するところから始めてみました。
彼女が言うにはこうでした。

→ そのコは大人猫だけど、毛艶もそこそこ良いので、まだ若いのだろう。

→ 彼女のマンション周辺、徒歩一、二分のところに出没、彼女のマンション内の隣家とか、そこここでちょっとずつ餌をもらってるようだ。

(彼女も餌はほんとはあげたいのだけど、ずっと猫のいる生活をしてきた人なので、この度は『飼わずに』コミュニケーションしてみたいと考えている様子です)

→ マンション近くの廃屋が、ほぼほぼねぐらのようで、外での雨宿りは基本そこのようだ…

私 マンションとその近辺のネズミ、獲るんだって?

友 うん。
  華麗に。
  ひらりって感じ。
  こないだ管理人さんとこの玄関前、お届け物になってたらしい。

私 ゴキとか?

友 ううん、ネズミONLY。
  うちのマンションの音とか感じてくれてるみたい。
  だからネズミ退治。

私 餌くれる人もいるのにネズミ退治?

(自力生計力あるってことだよね)

友 なついてくれてるんだよね?
  なでなでもさせてくれるし。

私 でもちょっとだけでしょ。
  ちょっと長くなるといきなりシャッ!、みたいな?

爪で払う仕草をすると、彼女は深々頷きました。

友 何でわかるのっ?? そうなのよーーーーっ!

そんなに触らせてくれるでもない。
すりすりはする。
お土産は持ってくる。
てことはつまり…


□ そのコは自立してる


そんなに触らせてくれるでもなく、いつまでも触っていると爪を振ってくる。
つまり、主体は本人(本猫)。
自分の気位の許す範囲で、甘えてもくれる、すりすりもしてくれるけどその実態は、すりすりというよりも、テリトリーマーキングに近いです。

猫のマーキングといえばオシッコを浮かべてしまうのは人間の悪い癖。
自分の匂いや毛くずがあれば、自分にも他の猫にも、自分のテリトリーだと伝えやすくなるではないですか。

彼女とマンション壁、階段角、同等にすりすり。
マンションもテリトリー、住人もテリトリー。
そのコはまさしくマンション住人とその内外を、『所有』しているのです。


□ 『所有』しているだけではない


なんとそのコの脳内では、どうやら

住人たちを養ってやっている

ことになってるみたいです。
管理人さん宅前に、ネズミが置かれてたのが論より証拠。
給餌されてるんですよ、人間のほうが。
完全に住人は、“養われて”いるのです(笑)。

友 かまってたつもりがかまってもらってたのかー。

私 でもなんかいいじゃん。自立心あって。
  このまま餌になじんでしまって、ただのオモライ猫になっちゃう危険性はあるけど、今のままならこのままあなたがたの上位存在として、君臨し続けるんじゃない?

友 うわーーー。
  君臨なのかーーーーー!!!


私の猫心理読み解きは、彼女をちょっぴりがっかりさせてしまったかもしれません。
でも猫は猫らしく、自由気ままであるほうがよくありませんか?
ただべたべたと甘えにくるタイプの猫さんなんて、私は願い下げですし、友人もきっとそうだと思います。



猫とあなたの心地よい距離④


□ 余談ですが


友人から、

マンションに入る猫

の話を聞いたとき、最初に連想したのは広島の、

尾道市立美術館の、警備員さんと攻防戦を繰り広げていた猫さん(たち)

でした。
警備員さんの目をかいくぐり、館内に入ろうとする猫と、館内に動物は入れられないので、と入らせないようにする警備員さんの、

殺伐としない戦い

が、友人のマンションのロック解除時を見計らう猫さんの知恵に重なったのです。

その戦いが殺伐としないのは、ひとえにその警備員さんが、

猫たちを力ずくで追い払う

のでなく、

行く手をさりげなくガード

したり、非常に近づかれてしまった際でもせいぜい、

抱きかかえて出て、外に放す

程度のことで済ませている、その攻防が愛らしいと、動画が人気を呼んでいるくらいなのです。
そんな警備員さんの日常と、友人の日常がちょっと重なってる気がして…

とても微笑ましかったです。


□ 微笑んでばかりもいられない事態


空前のペットブームの陰で、犬も猫も、さまざまな種類が増えています。
中でも猫では、

アメショーことアメリカンショートヘア

スコティッシュフォールド

マンチカン

などが人気を呼んでいますが、スコティッシュフォールドは耳折れの猫種、マンチカンは犬でいえば、ダックスフントやコーギーのように、極端に足が短いのです。
よちよちした感じがかわいいと、折れている耳がかわいいと、そういう可愛さが珍重される昨今に、私はちょっと不安を禁じ得ません。
マンチカンの足の短さは、どうやら交配固定ではないようですが、スコティッシュフォールドの耳は、突然変異の交配固定のようです。
人気猫種の一つに、ラグドールが入っているのもちょっと気になります。


□ 爪を立てない猫


ラグドールは、一説には、白いペルシャとシールポイントのバーマンの仔が、バーミーズと掛け合わされて生まれたと考えられている猫種で、柔らかな長毛です。

非常におおらかで、抱きかかえられることも好む

そうですが、

“ぬいぐるみの人形”(rag doll)

のようにおとなしく、寛容(?)で、従順。
こどもが多少手荒に扱ってさえ、決して爪は使わないといいます。
反撃しない猫、いえ、反撃の気質を奪われた猫なのです。
安全、でしょうか。
でもそこに、子等は学びを持ちえなくなると思います。

猫は厭なことをされたら、シャッって爪出るよ。

言われて、自らも味わって、こどもはひとつ賢くなる。
そのチャンスを、大人や社会が奪っている気がします。


□ 猫の魅力は自由気まま


猫は本来自由気ままな生き物で、そこがまさに魅力です。
猫の自由を尊重し、その高い自意識を尊重しましょう。
爪一つ自分のために振るえない猫なんて、果たしてほんとに猫なのでしょうか?
私たちは私たちの価値観におごることなく、他の生き物のありのままと交流すべきなのではないでしょうか。

なので…(笑)

私は友人の知り合いの今交流中の猫さんに、少なからず敬意を禁じ得ないのです。


※ その後、友人から抗議あり。

ドアロック開き待ち自立猫さんはけっこうすでに内側にいること多くて、入りたい入りたいの美術館猫さんたちとは全然違います!

って。
私が黙ると彼女も黙り、ややあって、彼女は弱々しい声を出した。

改めて考えると…
あなたの言う通りかも…
向こうがマンションの持ち主で、私らは、わざわざ鍵使って中入る…
向こうからすると、私らが外来者で、猫さんは中から『おかえり』って迎える…

うちのマンション、とうにあちらのものだったってことぉぉぉ!?


世にも稀なる猫管理マンションにお住まいのこの友人が、私はほんと大好きであります(爆笑)。


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