ぬくもり〔さちとピースさんへ。感謝を込めて〕

バイクは四季問わずだ。
春は桜、夏は海、秋は紅葉、冬は・・・
雪も氷も美しいが、二輪も四輪も滑るのは危険だ。
滑りそうになって、危ういところで乗り切って。
曲がるところを間違えた。

今頃は家に帰り着いてる筈なのに、私は山中の獣道に分け入ってる。
舗装された部分はすぐ終わった。
雪はかいてあるが、次滑ったらアウトだ。
戻ればいい。
戻ればいいのだが。
私は何となく、この道をこのまま行きたくなっていた。
雪がかいてある。
誰かいるのだ。


と。


行く手に小さな明かりが見えた。
素朴な作りの一軒家。
縁側も土間もあるようだ。
縁側の前の開けたところで、おばあさんが一人焚き火をしていた。

道、違(たが)えて来なさったね。
あたっていかっしゃれ。


焚き火はあたたかく、火の中から転がし出された焼き芋~見事なまでに銀紙で巻き巻きされていた~はめちゃめちゃおいしかった。

こんな山奥に、独りでお住まいなのですか?

と、聞きたくなるが言葉を慎む。
とても大事な場所なのかもしれないのだ。
部外者の問うことではない。
そんなことを考えながら食べても、焼き芋はやっぱり、おいしかった。


持って行くかい?

大きなのを二つ差し出された。
あったかい。

一キロ戻って左だからね。
気をつけて行くんだよ?

見送ってくださる視線がわかる。
ああ、もう一つわかった。
このかたは、ここに住んでるんじゃない。
雪の日とかにここにきて、間違ったり、迷い込んだりした人がいないか確認してるんだ・・・


数年後、近くまで行ったら道が封鎖されていた。

このほうがわかりやすいけど・・・

私はちょっと残念だなっておもった。

ありがとうございました

心の中で言って。

一礼して。

私は再び加速した。




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