大平原を渡りゆくものたち〔生々しい殺戮シーンがある(かもしれない)ので、苦手な方はブラウザバック願います〕


かれらは大平原を横切ろうとしていた。
渡り切ったらそこにはきっと、おいしいごはんが待ってるのだ。
一緒に行くと言ってきかなかったルレを左に、ルレのきょうだい、ポドリヨンを右に、かれらはひたすら走っていた。
もうすぐ渡り終えられそうだったのだけど・・・

だめだ!くる!

叫んだルレが白いものに覆われたかと思うと、悲鳴を上げるひまもなく、いきなりぶしゃりと潰された。
翻って白いものは、今度はポドリヨンを!
それでもかれはひた走って行くのだった。

パズリュンやケススを潰したのも、あの白い、ひらひらしたものだった。
それには大きな太い棒みたいのがつながってて、棒の先は五つに分かれてる。
白いひらひらなしに、枝分かれの一本がまんま降りてきて、かれらをぶしゃっと潰すこともある。
薄いピンクの棒、あるいは白いひらひら。
そいつらに見舞われたら、ほぼほぼたれも生き残れない。
でも生き残れたら、生き残れさえしたら、その先には絶対に、おいしいごはんが待っているのだ。


製本糊。
埃。
フケ。
糸くず。
砂。
仲間の死骸、等々々。

紙魚(しみ)たちも必死なのである。



#30年前の四百字小説
#テーマは・しみ・でした


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