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恋愛系

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#北条政子

惨(ざん)の記⑤完結

堀家

突然大姫様がお見えになった。
藤内光澄に会いたいというのだ。
藤内光澄といえば、他ならぬ義高殿を、直接手を下して討ち取った者だ。

最期が聞きたいのだ。
ぜひ会わせて欲しい。

いとけない姫の切実さ漂うおっしゃりように絆され、私は藤内を呼びにやらせた。

藤内は若いに似ず、脂ぎった中年のような雰囲気の男で、姫の前にかしづいても、贅(あま)り肉が小山のようで、俊敏だったであろう木曽若様をどう

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惨(ざん)の記④

六日(むゆか)の恋

とと様は、どうあってもにいさまを殺すという。
なぜじゃ。
妾をにいさまに引き合わせたとき、とと様はこうおっしゃった。

きょうからそなたはこの義高の嫁じゃ。
仲よう暮らすのじゃぞ。

そしてにいさまはうちにいるあいだ、たった一つのあやまちも起こしていない。
なのに殺すなんて間違ってる。
にいさまは、いい人なのに。
大人のつごうが変わっただけ。
そんなの、にいさまに関係ないでは

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惨(ざん)の記③

変化

寿永二年(1183年)夏から秋は、何やらとても慌ただしかった。
父上が幾度も平氏に勝ち、最後は平氏を追い出して、京都の警護者になったのだ。

人質の立場が逆転するかもな。



おまえでなく、大様のご家族ご一同がおまえの逆人質。

ありえるかー、それ?

このまま勝ち続けたらありえるって。

うはー。

そんな世情なら、頼朝の家の居心地も、悪くなってもおかしくないのだが、頼朝妻殿も家中の

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惨(ざん)の記②

不思議

不思議だ。
大と居ても、股間は凝(しこ)らぬ。
でも頼朝妻殿とか、侍女とか下女を、盗み見る時には凝るのだ。
夜半に怪しい夢見るときも、朝方それが屹立するときも、乗馬の途中も時々なる。
気味が悪い。
吾のそれはどうなってしまったのだ。
怪しい病気なのではあるまいか?

そうではない。
少し年かさの重隆が、吾と幸氏に説明する。

凝ったり、剥けたりすることによって、おまえらも一人前の男になる

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惨(ざん)の記①

人質

まだ元服したばかりじゃないか!

それでも…送らねばならぬ。

奥方は承知したのか!?

するわけがない。
それでも…送るしかないのだ。

いきなり平手が飛んだ。

義仲!
おまえは屑だ!

言い捨てて立ち去っていった。
頬はひりひりと痛い。
力自慢の巴にぶたれたのだから当然ではある。
室が弱かったから、巴は乳母でもあった。
太郎太郎と可愛がっていた。
それでも送るしかない。
鎌倉組のほう

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