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サステイナビリティは難しい(その1)

以前amirisuの会社のウェブサイトを作ったときにこちらでトクコさんが紹介してくれましたが、今日はamirisuの価値観でも挙げているサステイナビリティの話をしようと思います。

私は学生時代から環境問題に強い関心があって、大学では環境経済を学んだし、大学院では環境に配慮した都市計画や広域計画が専門でした。でも当時、環境への配慮は「本音と建前」のタテマエでしかなく、白日夢のようであり、「それでお金を稼ごうなんて甘いよね」的な扱いをされるばかりでした。都市計画の研究室ですら、環境に関することをテーマにしているのは私だけ。「環境?それ食べられるの?」という感じの反応でした。

それがいつの間にかに社会のスタンダードになり、環境に配慮した商品というのが十分セールスポイントになる世の中に。その変化に自分はほとんど寄与できなかったけど、そうなってくれて良かったと思っています。いつか自分が意思決定をできる立場になったら、取り組みたいと考えていました。

ただ、自分で会社を経営するようになって、会社の理念として環境に配慮した経営をするというのは意外と難しいなと感じています。自分が以前働いていたような大企業だったら、おそらくビルの照明を少し落とす、空調の温度を1~2度あげる、といった程度でかなりの消費電力の節約ができるし、自分たちは何もせずとも、環境保護団体に多額の寄付をすることで環境への配慮をアピールするということができます。おそらくほとんどの企業、特に物理的商品もない金融機関は、それくらいのことしかしていないと思うんです。

でも私たちのような零細企業にとって、何ができるのか。1つだけ良いことは、ほとんどペーパーレスだということ。それ以外では、例えば契約している電気を他の電力会社に移す、などが考えられるかもしれません。ですが、地方都市の賃貸物件は大家さんが丸ごと電気や水道の契約をしているところが多く、うちも大家さんに使った分をお支払いしています。勝手に変えられません。

次に取り組もうと思ったのは包装の簡易化です。商品が汚れないように、濡れないようにと大量に購入していたプラスチック包装をすべて辞めました。どうするか考えてリサイクル可能な梱包材などを求めて色々とリサーチもしたし、知り合いに聞きまくったりしましたが、情報がなさすぎて本当に難しく、プラスチックをやめるのが精一杯でした。何度か配送中に毛糸が濡れてしまったり、簡易すぎるとお客様からお叱りの電話やメールも頂きました。スタッフも私たちも相当気落ちしましたが、少数のお怒りのお客様よりも、不測の事故よりも、長期的なビジョンを大事にしようと自分たちを奮い立たせました。

現在は、一度包んでしまうと中身が見えないという問題はありますが、ビニールの代わりに茶封筒に入れることにしています。(商品に直接貼れるように、跡がつかなくて簡易に剥がせるバーコードシールも探しましたが、バーコードを印刷する機械が特殊すぎて、うちのような小さい会社が買えるようなものではありませんでした。小型の安いものを流通させてもらいたいです。)宅配袋だけはビニールコーティングされています。これも、本当は良い商品があったら切り替えたいものの1つです。

普通出版社では売れなかったり返品されたりした本を毎年大量に廃棄するものですが(業界の構造上返品が免れない)、amirisuでは1冊もまだ捨てたことはありません。書籍を発送するたびにビニールの緩衝材を使わなくてもいいよう、専用の箱も作りました。少し会社の規模が大きくなって、箱を専用で作ってもらったり、それを置く場所が作れるようになって本当によかった。世の中のほとんどの会社が苦心していると思います。

仕入れにも気を遣っています。海洋汚染の原因のひとつであるマイクロプラスチックの問題を知ってから、化学繊維の取り扱いをほぼ無くしました。ほぼ、というのは、例えばミシン糸はほとんどポリエステルだし、普通洗濯しないようなクラフト用の毛糸に関しては、少しだけ残しているからです。ですが、販売商品の99.5%以上は天然繊維だと言えると思います。

これは意外と難しくて、原毛の価格の高騰もあいまって、最近の靴下用の糸にはナイロン混がとても増えました。メーカーによっては、ナイロンが入っていない中細の糸がないところもあるくらいです。そういったメーカーに働きかけ、ウール100%の生地糸をamirisuのために仕入れてもらうような活動も行なっています。La Bien AiméeやLife In the Long Grass、Hedgehog Fibers(来月あたりから入荷します)といった毛糸ブランドはその良い例です。

また、毛糸はたいてい5カセ10カセ単位でビニール袋に入って送られてくるのですが、仕入れ先にこの小袋をやめてもらうこともお願いしています。融通がきくところでは、全体を1つの大袋にだけ入れてくださるようになっています。

それ以外にもできることはないかな、と常に模索しています。良い梱包材やサービスについてご存知の方がいらっしゃいましたら、いつでも是非教えていただきたいです。

メリ

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