今日も生きてますっ。

先月家の庭で、夫が小さなクワガタを発見した。

過去にカブトムシ三匹(オス一匹、メス二匹)を飼育し、二匹が20匹もの幼虫を産み落とし、飼育ケース(大)二個に分けて、夜になるとオスたちが凄まじい決闘を繰り返し、家中に「ブーンブーン」という重低音の不気味な音が鳴り響き、決闘に負けて今世をまっとうしたオスたちを、ひたすら土に埋めるという恐怖の飼育の経験がある。
それでもうカブトムシの飼育はお腹いっぱいです、となったわけなのであるが、クワガタと聞くと、話が違う。

なぜだろう、クワガタにはカブトムシにはないレア感もあるし、少し心ときめいてしまう魅力がある。

夫はクワガタを見せて「どうする?」と聞いてきた。
わたしは二秒考えて、「土と餌を買ってくる!」と、ホームセンターへ向かったわけである。

クワガタ用の土とゼリーを購入。
やや高級なゼリーもあったのだが、ま、そんなどれも大して変わらないっしょ、と思い、安めのものを選んだ。

早速家へ戻り、土をタライへ広げ、霧吹きで湿らし、最適なコンディションになるまで混ぜ合わせる。
それを飼育ケースの中へ敷き詰め、庭にあった木の枝をいくつかセットし、小さな虫かごに待機していたクワガタをそっと移した。

クワガタは驚くほど、人間っぽいリアクションをした。
「え!?ここどこなん??ふかふかの土ー!!」とでも言いたげな、テンションの上がり具合。
「えーえー!ここ、どこなーん?!」と声が今にも聞こえてきそうなのである。霧吹きで水を少しかけると、一瞬びくっ!と、体を震わせたりする。
わたしたちが勝手に擬人化しているのか、妙にこのクワガタが人間ぽいのか、どちらかわからないが、そんなことはどうでもよい。

とにかくこのクワガタはコミカルかつ、ユーモラスなのである。

小学四年の息子に「クワガタを飼いました!」と報告するも、親の異常なテンションとは裏腹に、「へー、あ、ほんまやあ」と反応は実に薄い。
名付けを頼むと、めんどくさいのか「クワちゃん」とシンプルな名前を提案。

そうして、クワガタのクワちゃんは我が家の仲間入りをしたわけなのだ。

早速ゼリーを置いて、様子を見てみる。
次の日もその次の日も、いっこうにゼリーを食べた形跡がない。夜にクワちゃんの生存は確認しているので、餌を気に入らず食べないとみた。

ネットで検索すると、クワガタはグルメで、何でもかんでも食べるわけでなく、気に入ったものしか食べず、えさ場も常に清潔に保っておかねばいけないらしい。

なんか、すごく手がかかる・・!
しかし飼育する方にはそれくらいの方が、飼育しがいがあるってものかもしれない。
放っておいても育つ昆虫なら、ついつい飼育に手を抜いてしまいそうだからだ。

しかし、またホームセンターへ行き、高級ゼリーを買う気になれない。
気に入らなかったら食べないかもしれない。それは勿体ないではないか。高級ゼリーなのに!しかも少数パックはなくて、たくさん入ってるのに!
一人でケチ根性とクワちゃんの今後の生存とを天秤にかけてもがいていると、
夫から「バナナはどうや?」と、案をもらったので、熟れたバナナをカットして置いてみる。次の日も、次の日も食べた形跡がない。

ああ、あの高級ゼリーを買わないといけないのか・・と自分の中のケチ根性と戦っていると、なんと、その次の日、食べた形跡を発見。

やっと、クワちゃんはバナナを食べてくれた・・!
クワちゃんからしたら、そろそろ腹も減ってきたし、バナナとかそんな好き違うけど、もうええわ、食べてあげるわってな心根かもしれない。

なんでもいいから餌さえ食べてくれれば、生きられるのだ。
クワちゃんの今後の生存と、高級ゼリーを買わずに済んだという二つの安堵でほっとする。

それからは毎日の霧吹きと、餌の取り替えの日々である。
梅雨時には、じめじめとしているので、なめくじが寄ってきて、それとの格闘も追加された。

クワちゃんが捕獲されてから一ヶ月ほど経つが、今でも元気に生きていて、相変わらずケチな家の都合でバナナを食べてくれている。
迷うところはここにもう一匹クワガタを投入して、繁殖させるかどうかである。
しかし数年前の『カブトムシ大繁殖の乱』の思い出が蘇り、その案には踏み切れないでいる。
しばらくしたら、自然へ戻そうか。どうしようか。
霧吹きを吹きかけ、餌を取り替え、生存確認、お世話しながら迷走中。

ちなみに小四男子の息子はまったく目もくれず、40過ぎた母親が熱心に夏のクワガタ観察に今日も勤しんでいるのである。



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