くーちゃんが死んだあと

去年秋に大復活を遂げた我が家の老犬くーちゃんであったが、12月に入り様子がおかしくなってきた。

夜に庭からくーちゃんの鳴き声がする。急いで出ると、犬小屋からお尻だけを出したままじっとしている。足腰が弱くなり、自力で出られなくなったのだ。

次の日、昼間に庭からくーちゃんの鳴き声。見ると、座ったまま鳴いている。

よくよく見ると、前足で踏ん張れず立てないようだ。お尻を持って介助してやっと立ち上がれた。しかし後ろ足もふらつき、またすぐに座り込んでしまう。

立ちたいけど、立てない。どうしていいのかわからない様子で、くーちゃんは擦れた声で鳴き続けた。散歩にはいけないので、エサだけでもあげようと、フードを出した。

足腰弱っても食欲旺盛だったくーちゃんは、どんなにフラフラになろうとも、フードにがっつくことは健在だったのだ、この日のくーちゃんは、フードを差し出してもそっぽを向いた。まったく食べようとしない。

足を震わせながら、ただ庭中をぐるぐる徘徊していた。全身の力を振り絞るかのように。くーちゃんが最後に歩いた姿だった。

それから三日間何も食べなくなったくーちゃんは、間も無く息を引き取った。快晴の朝だった。

当日動物専用の火葬場に家族で向かう。

祭壇には「ちゅ〜る」などのペットフードが山盛り置かれていて、同年5月に猫の「みかん」がここでお世話になった時にも驚いたが、何度見ても不思議なかんじがするのはなぜだろう。

お坊さんの腹に響くような太いお経が場内に響き渡る。人間の葬式は今までなんども経験してきたが、動物葬儀でのお経が一番胸に響いたのはなぜだろう。たくさんの「なぜだろう」がループする中、くーちゃんは一時間ほどして骨だけになって現れた。一人ずつ骨壷に納める。


庭にはくーちゃんがもういない。いつも朝洗濯物を干す時、決まって足元にすり寄ってきた影が消えては浮かぶ。


先日、庭に見たことのない鳥が顔を出した。ブルーがかった色のその鳥は、南天の実をくちばしにくわえていた。キョロキョロと庭を見渡し、しばらくして飛び立った。

その後、また何かが庭で動いていると見たら、鳩だった。10年この家に住んでいて、鳩がやってくるのは初めてである。じっと観察すると、その鳩は片足を負傷しているのか、左右に揺れながらバランスをとって歩いていた。食べ物を一生懸命探し回っている。

歩きずらそうに、でも懸命に生きてるその姿は、最後この庭でよろめきながら歩いていたくーちゃんを思い出させた。この鳩、ちゃんと飛べるのだろうか?と思った瞬間、その鳩は一気に飛び立っていった。

ほっとしたのも束の間、今度は、腹の黄色い鳥が庭の石で休憩している。まさに鳥のオンパレードである。静かに庭が賑やかだ。

ふと見ると木蓮の木に蕾がついていた。

立春間近である。



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