馴染み客と思われたくないのだが


気に入った店には足繁く通ってしまう方なので、すぐに店の顔馴染になってしまう。(週一で通ってたカレー屋では、「○○さんとお知合いですよね?」と、素性がすぐにバレてしまって、ものすごく恥ずかしかった。)

顔馴染になってしまったら、一々会話を交わさないといけなくなるので(4ラリーくらいだろうか)、面倒になってしまって、一気に通わなくなるのだ。


そんなわたし、最近TSUTAYAのヘビーユーザーである。

三日に一度くらいは通ってる。


映画をいろいろ観出して、ちょっと重いテーマのものが多かったので、頭の中でバランスがとれなくなり、お笑いのDVDを借りて脳をふわっとさせようと思ったのだ。


アメトークを中心に観ていたら止まらなくなり、久しぶりにすべらない話なんかにも手を付けだした。

兵藤や、原西、やっぱおもろいなあと思いながら腹を抱えて深夜に一人で爆笑していた。


いつも大体同じ時間に返しにいくので、カウンターの人が同じことが続いていた。
50過ぎくらいのおばはんである。

「あ、この人また来てる。お笑い好きなのねえ」と思われてるんではないかと、内心推測し始めるようになった。

しかし毎日いろんなお客さんが来て、流れ作業のように受け付けてるわけで、一々誰が何借りてるかなんて見ないよな、とも思った。


そんな中、今日も堂々とお笑いDVDをばこーんとカウンターに置くと、いつものおばはんだった。

DVDを見るなり、はっとした顔になり、、


「これ、一人で出てはるんですかね?」と、聞いてきた。
業務的な話なのか?と一瞬聞き間違えた?とも思ったが、どうやら、すべらない話に松っちゃん一人で出演してるかどうかということだった。

「いえ、ゲストの方が何人か出られてて」
「あ、そうですか。おもしろいですか?」
「いや~ゲストにもよりますね。」
「ああ~そうなんですね、前から気になってたんですよね!」
と、わたしとおばはんの微妙なラリーが繰り返された。

極めつけは、今まで業務的な「ありがとうございました」だったのが、いきなり「いつもありがとうございます!またお越しくださいっ!」と、満面の笑みに変わったことだ。


なに、一気に心開いとんねん!と、心の中でツッコんでしまうほどに。


きっと店員の間では、「最近お笑いにハマってて、たま~に暗そうな映画を借りていく人」と裏で言われているだろう。

気さくな人と思われて喋りかけられたのかもしれないが、ビデオ屋の店員とのフリートークは、何かとても恥ずかしい気になるのはなぜだろう。




2016.11.22『もそっと笑う女』より

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