ラグビーと、どんぐりスープ


休日の午前中、だだっ広い公園で、突然ラグビーの練習をさせられることになった。


夫が中高とラグビー部だったので、ずっと息子にラグビーを教えようと、子供用のラグビーボールを買って鼻息荒くしていた。

しかし、息子はまったく興味を示さず、気持ちいいくらいに無関心だ。

途方に暮れた夫は、隣でぼうっと立っているわたしに狙いを定め、ラグビーボールを投げてきたというわけだ。

ラグビー経験者でもなければ、運動能力ゼロの嫁をつかまえて、ラグビーって、大体どういうことなんだ。


走ってパスするという、ランパスに始まり、しかも、夫が加減したボールを受け止めるのでも、結構な力がいる。


「うおっ」「ごっ」「だはっ」「のうっ」
など、人生で出したことのないうめき声が出てきてしまう。

「このやろう!」と、全力で夫に投げ返すのだが、ゆるやかな放物線を描いて、「ぱすっ」と軽い音をたてるだけだった。


ラグビー千本ノックを受けてる間に、息子はどうしてるのかというと、公園に落ちてるどんぐりを皿に入れ、どろどろの水を入れて、木の棒でかき混ぜていた。

「どんぐりスープ作ってんねん」と、息子は息子でなんだか忙しそうだ。


思い切りボールを投げる夫に、欽ちゃん走りでボールを追いかける嫁、そしてすごく、えぐそうなどんぐりスープをつくる息子。

もう、わけがわからない。


そんな平和な休日だった。



2016.11.1 『もそっと笑う女』より

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