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【ことわざdeショートショート】骨折り損のくたびれ儲け

#ショートショート
#短編
#骨折り損のくたびれ儲け


休日の早朝にも関わらず珍しく早く目が覚めてしまった私は、どうにかこの暇を解消できないものかと、散歩に出ることにした。

梅雨の合間の穏やかな晴天。
夏が徐々に近づいているこの時期、多少の蒸し暑さはあるものの、空気はまだひんやりと感じられる。
そんな心地の良さを感じながら、私は静かな一本道を歩いていた。

すると道の先に、何かが落ちているのが目に入った。
数日前に舗装されたばかりの真っ白いコンクリートに、それは随分と派手に映った。
思わず早足となった私は物体の前で止まり、思わず驚愕した。

「ん?えっ?」

驚くのも無理はない。
それは平凡な人生では決してお目にかかることがない、
重厚感あふれるボディが特徴の「拳銃」だった。

思わず手に取りそうになるのをグッと堪え、私はしばし見入った。
(どうしよう…こういうの通報した方が良いのかな?)

頭の中でこれから起こるであろうさまざまなことを連想しながら、一人プチパニックに陥っていると、突如頭上が暗くなり始めた。

思わず見上げると、バカでかい銀色の肉まんのような形の物体が空中停止している。
するとその瞬間ものすごい光線が、私と「拳銃」が落ちている場所を照らし出したかと思いきや、なぜか「拳銃」だけがポワッと浮かび上がり、その銀色の肉まんに吸い込まれるように上昇していった。

私は目の前で起こっている出来事に、しばし自分のいる場所を忘れそうになった。

気がつくと、バカでかい肉まんが跡形もなく消え去り、いつもの静かな平穏な風景が広がっていた。

あれは一体何だったんだろう…。

私は、非日常すぎる「拳銃」に対する焦りと、それが想定外の出来事によって解消されたこと対して、どう家族に説明しようかということで、呆然と立ち尽くすしかなかった…。


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