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【慣用句deショートショート】舌を巻く

#ショートショート
#短編
#慣用句
#舌を巻く

俺の知り合いに、やたらリアクションが大きいヤツがいる。

そいつは、俺が食べた夕食のメニューに驚いていた。
いっておくが、ご主人様手作りの鶏のから揚げだ。

しかもヤツは、俺の着ている服にもわざわざ反応するんだ。
普段は全身緑色だというのに、どういうことなんだろうか。

俺はとうとう聞いてみた。

「なぁ、お前はやたら俺の話の度に、いちいち驚いているようだが、一体何なんだ?」

するとヤツは、口を開いた瞬間とんでもないものを見せてきた。

なんと。

長い舌が、くるくると見事な渦を巻いているではないか。

そのくるくる具合は、まるであのペロペロキャンディーのあのくるくるにも負けず劣らずで、思わず見惚れてしまった。

いやいや、そうじゃなくて。

「それで、お前は何でそんなにいちいち驚いているんだ?」
するとヤツは、眉間に皺を寄せながらこう言ってきた。

「ハッ?お前何を言っているんだ?」

すると開いている窓から西日が差してきた。

俺たちの体はすっかり、オレンジ色になってしまった。

ガラス越しに見える人間の女の子があんぐりと口を開けている。
その舌は見事なまでに、くるくると渦を巻いていた。


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