ショートショート「スペクタクルをお手軽に」

※この作品は私が別サイトに投稿したものを、多少の表現や言い回しなどを変えつつもほぼまんまの内容にて投稿いたしました。あっ、これどこかで見たことのあるやつ、と思われた方、決して盗作ではなく、同一人物が書いた完全オリジナルです。


人々は歓喜し涙した。ついにあれが世に出たのだ。

「日常にスペクタクルを。映画でしか味わえないあの体験が缶詰で蘇ります」 インテリアや観賞用に。                         流行に敏感な人々は飛びついた。             

お湯を入れるとすぐにその世界を再現できる。VRなんて必要ない。
別売りでテレビやパソコンと繋げることができるし、好きなスペクタクルを缶詰にできるサービスも充実。


だが困った事が起きた。音の出るものは蓋をきっちり閉めておかないと、大音量でそれが鳴り響き、耳鼻科に駆け込む人が絶えない。またそれによる騒音トラブルも多発した。

次第に人々は、スペクタクルなことが当たり前になり、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなった。
ある日から突如銃撃戦が始まった。


しかし人々は逃げようとしない。むしろそれを見ようと集まりだした。頭上で弾が行き交っている、にも関わらずだ。人々は怖さなど微塵も感じない。まるで格闘技の試合で熱狂するが如く、目の前で繰り広げられているこのスペクタクルな物語に釘付けなのだから。

よろしければサポートを頂けると幸いです。 頂いたサポートは、自分や家族が幸せになれることやものに使わせていただきます。