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─『ストーリー・オブ・マイライフ』

(コロナ自粛の関係で)この記事を公開しようかすごく迷ったんだけど、きっと見る人もいないのでひっそりと投稿することにした。

映画館で久しぶりに映画を見てきました。

最高だね。前後左右が一席ずつ空いているから、後ろから座席を蹴られる心配もないし。ただ空きすぎて映画館の経営とか大丈夫かな…と心配になるけど。あと、上映開始されてから入ってくる人がいなければ、エンドロールで席を立つ人もいない。

優しい映画だね、というのがまとまった感想かな。

ストーリーラインがふたつあって、

原作となった若草物語を(多分)読んだことのない私には少し分かりにくかった。

ここでいうふたつのストーリーラインとは、ひとつが若草物語のストーリー(次女ジョーに焦点があてられている。以下、単にジョーと書きます。)で、もう一つが作家ジョーとでも名付けるべき人物(以下、作家ジョー)の、映画オリジナルのストーリーのこと。

前者は回想のような役割を果たしていて、後者は現実のような役割を果たしていた。解釈は人によって異なるだろうけど、私はそう解釈しました。

ベースが若草物語なので、そのストーリーを再現しようとすればするほど、映画の中では回想シーンが増えていくような感じ。若草物語は若草物語、映画のストーリーは映画のストーリーという風に、棲み分けている感じではあったけど、このふたつのストーリがとても曖昧に(時代背景とか衣装もそんなに変わらないので)、かつ短い周期で頻繁に切り替わる。ふたつのストーリーがDNAのように螺旋状に絡まり合って進んでいく構成で、少し難しかった。

原作の内容を把握していないからなんとも言えないけど、「実写化」ではなかった。新しくカバーされた、「Little Women」だと思う。

この映画の主人公は小説を執筆する作家ジョーと、作家ジョーが執筆する小説(若草物語)の登場人物、ジョーのふたり。ふと有川浩さんの『ストーリーセラー』を思い出した。うろ覚えだけど、似たような構造だった気がする。こうした二重構造(?)をもつストーリーは、上部の主人公が生きているということを際立たせるような気がする。

「結婚が女の全てじゃない」「でもどうしようもなく寂しい」

というフレーズがとても印象に残った。

映画の描写では、作家ジョーは編集長に妥協した結果、ジョーを結婚させることになった。ジョーは「結婚が女の全てではない」と考えている人であったけど、最終的に結婚することになった。

一方で、作家ジョーの結婚についてはぼかされている。それが現実の「妥協点」のようにも感じた。いまだに、「女が結婚しないこと」はイレギュラーに見られがちだ。

と、ここで思考が脱線。最初に創られたアダムって「結婚」してるのかな?仏教だって結婚しない宗派があるのに、なぜ「俗世」の人間は結婚することになっているんだろう。ムハンマドは結婚してるけどね。ギリシア神話入門的な本を読んでいて、「ゼウスの妻」とは出てくるけど、神の「結婚」という文面はあまりでてこない(浮気とかはたくさんあります。)。あるいは「妻」という表記があることをもって結婚しているとみなす…?まあ、神代と俗世は違いますよね。

元に戻ります。作家ジョーの結婚については、視聴者の想像に、未来(というのも変な話だけど)に任せているのではないかと思う。例えば受け手が「結婚しないのもありだよね」という考えの持ち主であれば、彼女は結婚しないだろうし、「結婚すべきだ」と思うのであれば、彼女は結婚するんだろう。

結婚してもしなくても、どちらでもいいんだよ。

最近、「女の強さ」を前面に押し出す映画が多くて、それはそれで力をもらえるけど、本作はなんとなく「安心」をくれる映画だった。

「資本主義」

内容がいいから本になるのではなく、売れるから本になる。ってことを編集者のおじさんが教えてくれた。そして多くの読者はハッピーエンドを求めていて(ハッピーエンドのほうが「売れる」)、女性が主人公の小説のハッピーエンドといえば、結婚すること。

結婚も資本主義も、今の社会とは切り離せないもので、表面上層はそう見えなくても、両者がどこかで繋がっていることを感じた。ハッピーエンドといえば結婚で、そしてハッピーエンドの本がよく売れる。ハッピーになるためには結婚が欠かせないとでも言うかのような刷り込みが、資本主義を通して循環している。このおじさんには、愛を込めて「資本主義」というニックネームをつけることにした。別にこのおじさんが嫌いなわけでもないし、資本主義を否定するわけでもない。

ただ私の肌には合わないな、というくらいだ。

ローリーとジョーの組み合わせすごく好きだなと思った。ちょっとこれはしっかり考えた末での発言ではないんだけど、「男女の友情は存在するのか」という議論よりも、人間愛があって欲しいなと思う。

最後に、ティモシー・シャラメすごくよかった。この人が出演している映画を見てみよう。

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おしまい。


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