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不思議な第六感の話

突然だけど自分ら姉妹は子どもの頃から音楽を習っていて、実家は一部屋をピアノ教室として解放している。父の妹である叔母さんが教えているのだが、そんなわけで木曜日と土曜日はエンドレスでピアノの生音が流れてきていた。幼児から大学の受験生まで。早い時間は幼児、そして夜になるにつれて上級のピアノが流れてくる。

その部屋には、グランドピアノとエレクトーンが置いてあり、私は、エレクトーンを選んだ。妹は、ピアノを選んだ。結局音楽と美術、どちらの道に進もうかな〜???という金持ちのような思考で、私は美術の道に進むことにした。親はとりあえず娘のやりたいことを応援するタイプだったので、長年習わせてくれた音楽の道に進まなかったことにも全く文句は言われなかった。妹は、小さい頃から歌が異常に上手くて、上手いと言うか、なんと言うか、よくわからないけど、音を外さないとか、声に伸びがあるとか、高い声が出るとか、ビブラート普通にしてるとか、そんないろんな技術が妹は自然と備わっていた。なので、妹は音楽の道へ進んだ。

音大の声楽科に進んだ妹。ピアノが弾けるのは当然として、歌がとてもうまかった。同じ姉妹とは思えないほど上手くて、幼い頃からカラオケに行っても私は全然面白くなかった。自分は全然上手に歌えないのに、妹は歌いたいように声色を変えられるようだった。羨ましい。私は目立ちたがり屋だったので、もし妹のように歌が上手かったら、その能力をフルに駆使して、CDを出したかもしれない。しかし妹は奥ゆかしい性格だった。

前段が長くなったが、私は妹が持っていない音楽的才能を一つだけ持っている。よく聞く「絶対音感」と言うやつだ。残念ながら、ほぼ同時期から音楽を始めた妹には微かにしか備わらなかった。そして音楽の道へ進んだ妹だが、自分には絶対音感がないと言うことで、少しばかり苦労したようだ。美術の道へ進んだ自分には全く必要のない能力だったので、妹にあげたかった。そもそもどのように自覚したかと言うと、小四くらいの時、ラジオを聞いていたんだけど、なんかの音楽が流れていて、『自分はどうも、次に鳴る音がわかる能力を持っているかもしれない』と言う感覚が突然芽生えた。ラ〜ソ〜と言う音楽だったとして、ラの時にはもう次にソがくるのがわかっている、と言う感じだった。ちょっと意味がわからないと思う。けど、とにかくラは「ラ」として頭に入ってくるのだ。他のなんでもない。それを「次の音が読める感じ」だと当時解釈したのだった。

わかりにくい。まあいい。で、そのうちに、「絶対音感」なる言葉を知る。ああ、なんだこれじゃんとあっさり自分の脳の疑問が解けて、スッキリした。

これは小さい頃からピアノの音を聞いていたからなのか、繰り返し聞く頻度が人より多かったためなのか、それとも才能とか言うのがあったためなのか、わからないけれど、まあなぜかできるので不思議だ。音楽の道へ進んだ妹は、大学卒業後、お歌の先生になった。小さい子や、お年を召した方にも歌を教えるのだ。才能を生かした素晴らしい職種だ。妹は、加えて、小さい子どもが大好きなので、保育士になろうとしている。第二子を産んだばかりなので就職はまだ先になると思うが、異常に歌の上手い保育士さんがいたら、うちの妹だ。心して歌うと良い。子どもたち。

そんな妹にはこれまた不思議な能力がある。それは『人の声が線グラフで見える』と言うものだ。よくわからない。じゃあ姉の声をグラフで書いてよ、と言うと、----/|_____ みたいな感じだった。これはどう言う意味なの?と聞くと「はっきり言って歌の伸びしろはない。声が死んでいる」と言われた。要するに人の声帯が図形のように見えるということらしい。みんなに見えるらしい。そして用途としては、歌が上手いか下手かわかる、と言うことである。声楽は練習はもちろん必要だけどぶっちゃけ声質でしかない。生まれた時から歌えるかどうかは決まっている。と言うのが妹の自論だ。

妹は最近よく聞くHSPと言うやつだ。異常に音とかいろんなものに繊細だ。妹は、お化けがみえる。これはもう確実にみえる。妹はめちゃめちゃビビリなのだが、小さい頃からあまりに不思議なことを言うので「おばけ見えたとか嘘言ってたら、本当におばけ出てくるよ」と脅したら、「だって本当にいるもん」と言っていた。細かいエピソードは死ぬほどあるのだが、父が中札内と言うど田舎の村に単身赴任していた時、あまりに田舎なのであてがわれた家が一軒家だった。高校生ぐらいだった自分らは、たまーにその家に遊びに行った。妹は家の前に車がついた瞬間に「あ」と言った。この妹の「あ」は、何か見えた時に発するものだ。今は言わないでね。と念をおして、釧路の家に帰った後に教えてもらったら、「家の前にエプロンした女の人が立ってた」とのことだった。数年の任期を終え、父が釧路の家に帰ってきたが、すげえ太っていた。父曰く、実は家に帰ってくるとテレビの場所変わってたりなどなど、中札内の家では不思議なことが沢山あったらしかった。しかし父ものんびりしたタイプなので、「さみしいし、まあいてもいいよ」と思ったらしい。そうしたら、祖母(父の母)が中札内の家に手伝いに行った際に、階段から落下して骨折した。

母が、本格的におばけ見える人(妹と違って見ようと思えば見える人)にどっかの運動会でたまたまあったら、「旦那さんやばいよ!!!まじで憑かれてるよ!!酒、飲んでるんじゃなくて飲まされてるよ!!!」と言われたらしい。(父はめっちゃ酒を飲む)。とりあえず墓参りに行けと言われたから行った。後ほど発覚した事実だが、その中札内の家はそもそも事故物件だったらしかった。不倫で誰かが死んじゃった家だったらしい。父は知っていたらしいがあまりおばけを信じていないので、どうでもよかったらしい。危うくあの世に行くところであったのだ。

あとは妹と二人で車でTSUTAYAに行った時に「あ」と言われたので、帰宅後に訳を聞いたら「外に自衛隊?っぽい人いた」とか、私が実家の自室から出てきたら「あ」と言われて、何か聞いたら「お姉ちゃん今女の人の生首が部屋に入ってったよ」とか。←これに関しては怖すぎて超泣いた。

あとは塾で半分寝かけてたら、上から鞠がバーンって落ちてきて、ハッと顔を上げたら、女の人がスーッと消えていった。と言うのが二日連続あったこととかだろうか。

東京で妹と二人暮らしを四年くらいしていたが、東京にいるおばけは釧路のおばけよりも邪悪なものが多いらしかった。一度「お姉ちゃんあの道はもう2度と通らないで」と言われたことがあった。よく通ってた道だった。明らかに悪意のある女が喫茶店から外を見ているとのことだった。もう2度と通らないと決めた。あと、妹が渋谷のカフェでバイトしてた時にめちゃめちゅ大きい黒い影が壁から壁に入って行ったのも数回見たと言っていた。怖い。

そんなわけで妹はおばけがみえたり、人の声が図形になって見えたりする。

ちなみに東京きてからずっと通っている美容室の鈴木さんは、こないだ話してたら、「自分は人より多く色が見える」といっていた。多分色彩検定などに強いタイプであろう。緑の中にも色々な段階の緑があるのはご存知と思うが、その分類が多分普通の人よりかなり細かくできると言うことだろう。すごい。

あと鈴木さんは、これもたまによく聞くが、共感覚と言うのを持っているそう。例えば、右は赤、左は青(細かい色分けは忘れた)だとして、右という漢字に青が使われていて、左という漢字に赤が使われていたら激しく混乱するらしい。アイウエオ全部に色が付いているらしい。全然意味がわからないが、私が「ラ」を聞いたら「ラ」にしか聞こえないというのと同じなのかもしれない。視覚か聴覚か、という話だけかもしれない。

真偽のほどは知らんが、人の脳は全体領域のおよそ10%ほどしか使えていないという神話がある。不思議な能力の正体は、この10%の範囲が微妙にずれていることだったりするのではないだろうか、と思っている。そういえば、私には「恥」という感覚がほとんどないな、と思う。妹は人一倍繊細な性格の代わりに、おばけが見えるのかもしれない。怖い。そういえば鈴木さんも割と繊細な心の持ち主のようだ。しかし鈴木さんは数年前にした会話の内容なども覚えていることがあり、色の好みやスタイルの好みなど、イメージさえ伝えればバッチリそうしてくれるので、鈴木さんを全面的に信用している。美容師にうってつけの能力だ。何かの代わりに、何かを手に入れているのかもしれない。

そして例えば脳の領域が15%とか使える人を、天才というのかもしれない。周りにも数名「天才」と思わしき人がいるが、何かを持て余しているようにも見える。

なお、うちの夫だが、「テレビがついている家が家の外からでもわかる」という能力を持っている。本当に意味がわからない。

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