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悲劇の「栗の木」と遺伝子工学による希望ー悲劇編

今回は、絶滅危惧されているアメリカグリの悲劇についてご紹介します。
「えっ、悲劇かよ。」と思うかもしれませんが
植物が絶滅まで追いやられる原因を知っていますか?
シロクマなどの動物が絶滅危惧になった場合では、
地球温暖化、ヒトによる乱獲など原因を簡単にあげることができます。
一方で、植物の場合は「なんだっけ?」となりませんか?
アメリカグリの悲劇を見ることで植物が絶滅に瀕する原因を知りましょう!

アメリカグリとは?

アメリカグリ(学名 : Castanea dentata 、英名 : American Chestnut)は、
アメリカ合衆国東海岸原産のブナ科の落葉高木です。

昔、アメリカ東部の森林の25%がアメリカグリ
材は家を建てたり、実は食用や飼料したりするなど
アメリカグリは生活・文化において根付いていました。
また、人だけでなく動物でも重要な食料源・住処になっていました。


しかし現在では、約30億本あったアメリカグリは枯れ
絶滅に瀕しています。

なぜアメリカグリは絶滅に瀕している?

絶滅に瀕している原因は、Cryphonectria parasitica (クリ胴枯病菌)です。
クリ胴枯病菌はアメリカグリの傷口や割れ目から感染し、
オレンジ色の腫瘍を形成しつつ、
シュウ酸を放出して形成層(内部)を壊します
それにより、感染部より上部は枯れ、下部(根など)は生き残ります。
しかし、下部から新芽が出てきたとしても
残存の菌に感染してしまうため一年程度で枯れます。


クリ胴枯病菌は、1904年にブロンクス動物園(ニューヨーク)で発見され、アジアからアメリカへ持ち込まれたと考えられています。
また、この菌は蔓延しやすく1年で周囲80キロ程度拡大しました。
急速な拡大の要因の一つに
森林従事者の靴底や斧にくっ付いたクリ胴枯病菌が
新たな場所で落ちることによって蔓延したと考えられています。
そして菌発生から約40年で、
アメリカのほぼ全てのアメリカグリを枯死
に追いやりました。

怖いですね、この菌。
一方で、アメリカの研究者たちは、
この惨劇をただ傍観していただけではありません。
一生懸命に策を講じています。
次は、アメリカの研究者たちの取り組みについて見ていきます。
引用:
http://www.cornwallhistoricalsociety.org/exhibits/forests/chestnutblight.htm

困難な育種

1922年にUSDA(アメリカ合衆国農務省)では、
クリ胴枯病気に抵抗性を持つ中国グリを使って、
抵抗性アメリカグリの開発を始めました。
当初は、1、2遺伝子が抵抗性に関与していると考えられていましたが、
実際には、9遺伝子が抵抗性に関与し、
想定よりも抵抗性機構は複雑である
ことがわかりました。
複数遺伝子が抵抗性に関与している場合、
育種による抵抗性アメリカグリを作り出すのは困難になります。
また、アメリカグリは生育に長い時間がかかり、
育種に使用できる個体数があまり多くありません。
よって、育種による抵抗性アメリカグリを開発は絶望的でした。

引用: http://www.accf-online.org/breed.html

次の話では

絶滅の危機に瀕したアメリカグリを遺伝子工学によって
復活させる初の試みをご紹介します。

引用:
Genetic engineering can save the American chestnut tree from a deadly fungus

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