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#26 ランドセルと絵の具箱

小学校に入学してすぐの頃。

図工の授業で使う、絵の具箱を買うことになった。

学校で配られた封筒には、いろんな絵の具箱の写真が載っていて。昔から絵を描くことが好きだった僕は、自分の絵の具箱を買ってもらえることが嬉しかった。

僕は、青い絵の具箱を選んだ。三ツ星のマークが入った、青い絵の具箱。


先生は言った。


「それでいいの?こっちの色にしたら?」


先生が指さしたのは、同じ絵の具箱の色違い。
先生が勧めてきたのは、オレンジ色の絵の具箱。

でも僕は、青い絵の具箱が欲しかった。
だから、「これがいい。」って先生に言った。


家に帰ると、お母さんにも言われた。


「これでいいの?」


その時の僕は、なんでみんなが僕の絵の具箱の色のことを気にするのか分からなかった。


あの時から僕は、この世の中に、少しの違和感を感じるようになった、と思う。



☆☆☆


Twitterで、世の中のお母さんお父さんたちが、子供のランドセルの色決めで困っているツイートをみかけた。

子供が欲しいという色にしてあげたい。
けれども、学校で浮いてしまわないか。

祖父母が赤色以外許してくれない。

今はそれでいいけれど、少し大きくなった時に、
恥ずかしくなってしまわないか。


いろんな意見があると思った。


僕のランドセルは、母方の祖父母からの入学祝いだった。色は、特に相談もなく、もちろん赤色。

赤色は普通に好きだから、僕はランドセルの色で嫌だと思ったことはないけれど。

嫌いな子もいるだろうな、とは思う。

みんな、好きな色のランドセルで、楽しく学校に通ってくれたらなって思う。


☆☆☆


今思えば、先生は僕のことを心配してくれてたんだ思う。

お母さんも、心配してくれてたんだと思う。

僕が、ほかの子供たちから変な風に見られないか。
きっと心配してくれていたんだと思う。

でも結局、僕は青い絵の具箱を選んだ。

その絵の具箱を、僕は小学校6年間使い続けたけれど。

何も無かった。何も無かったんだ。

先生がお母さんが心配していたようなことは、何も無かったんだよ。


ありがとう。

あの時、僕の好きな色の絵の具箱を選ばせてくれて。


☆☆☆


僕が、僕らしく生きられるように。

僕が、僕のことを愛せるように。

僕が、僕を殺すことがないように。

これからも、生きていきたいと思います。


みんなも、自分らしく生きてね。


☆☆☆


これは余談だけれども。

僕の選んだ青い絵の具箱を、僕の友達も選んでいた。

幼稚園からの幼なじみで、仲良しの女の子。

あの子は、どうしてあの絵の具箱を選んだんだろう。

あの子も、青色が好きだったのかな。

あなたの真意は分からないけれど。

僕は、あなたとお揃いの絵の具箱を使うことができて、とても嬉しかったんだよ。


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