見出し画像

活いか

東北のうまいものvol.2【青森県三沢市】

仕事の関係で10年ほど青森県に住んでいました。

太平洋側に面している八戸市と三沢市はイカの水揚げで有名なところです。

八戸市では「イカソーメン」といって、細く千切りにしたイカを生姜の効いた麺つゆでいただくのが主流です。

一方、隣の三沢市では「活イカ」といって、イカのお刺身を正統的にわさび醤油でいただくのが流儀となっております。

28歳の時に職場の先輩に連れられて、雑居ビルの2階の、アーシーな居酒屋で食べた時の、あの感動は忘れられません。

寡黙なご主人が、注文を受けると(店内の生け簀を泳いでいる)朝獲りのイカを素早くさばいてくれます。

「え?イカって真っ白じゃないんだ」

イカの本当の色と本当の味を知ったのはこの時です。

はじめはコリコリと歯応えがあるのですが、噛んでいるうちにトロッととろけてきます。

またゲソが絶品。

胴体がついたまま皿にのってきますが、あとで刺身か炙りかを選ぶことが出来ます。

僕たちはこんな新鮮なイカを炙るなんて、神をも恐れぬ暴挙に出る勇気はないため、ゲソも刺身にしてもらいます。

そして、切り分けられてもまだ皿の上で動いているゲソを「問答無用」とばかりに、口の中に放り込みます。

ゲソの方がコリコリとした食感をより楽しめます。思わず顔がほころんでしまいます。

食べていると、たまに吸盤が口の中の粘膜に吸い付いてきます。

「こんなに求められたことがあったかしら?」

と少しときめいてしまいます。

「付け合わせ」で大間産のマグロを頼みましたが、完全に脇役ですね。

「マグロ?そんな落ち着きのない大型回遊魚は金持ちに食わせておけばいいさ」

っていう気持ちになってきます。

その為、僕は個人的に「マグロ殺しのイカ」って呼んでいます。

活イカ…時価

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?