夢見るマリオネット

お酒が残った身体を突き動かして
貴方のいるベッドから身体を起こす
朝の5時。おはよ。
眠気の残った身体に皮肉を込めたご挨拶

今日の調子はどうかしら。
鏡に映った私。
ボサボサの黒くて重たい長い髪
くまのついた暗い目
今日も元気なさそうね。結構よ

朝の支度を始めましょう
まず歯磨き。次お風呂で。ご飯も作らないと。
とりあえずコーヒーをオンにして。
香水はどれが好きだったかしら。

彼を起こさないようにと
朝から静かに
それでも急がないと終わらないから
静かにあちこちパタパタパタ
朝ごはんは何が良いのよ
まだ好きなものすらわかってない…

お願いだから起きないで
今起きてしまったら可愛げの無い暗い目がバレる
メイクしなきゃ
焦って物を落としそう
落としたらあなたが起きてしまう

友達が見たら笑うだろうな
あの貴方がそんなに尽くしてるの？って
家族が見たら怒るだろうな
家じゃほんっっとに何もしないくせにって
元カレさんは何も思わないよね
お前の無いお前が好きじゃなくなったらしいから

忙しく走り回っていたはずのに
それを思ったら足が痺れてしまった…

お願い動いて
今止まっちゃったら
叶えたかった夢はどうなるの

夢と聞いて頭が凍ってしまった…

お願い働いて？
描いていた夢の私が…
こんな時でも笑顔で…

取り繕った私で夢を見させて
お願いだから動いて
必死で掴もうとしてるのに…
もっと長く夢を見ていたいの

そのためなら…
私は人形にだってなるよ？
操り人形でも良いよ
望まれたら望まれたように
感情だって捨て…
「…ぐすっ…」
てみせるから…

「あれ？隣に居ない…」
呟くあなたの声
同時に急いで筆を持って
黒のガラスの瞳に
白の絵の具を無造作に落とす
「メイク中！立ち入り禁止〜！笑笑」

おはよう私。今日も大丈夫そ？
もちろん問題無いよね
私が傷つくわけ、ないんだもんね

そうよね…
貴方が大好きだもんね