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『赤い子馬』感想

 いつ買ったのか、何で買ったのかわからぬ古本はうちにたんまりある。『赤い子馬』もその一冊だった。なんとなく読み始めたのが大体一週間ほど前のこと。見たら昭和31年の出版、そら旧字も多いわな。読みながらクイズをやっている気分もちょっとあった。

 それを今さっき読み終わった。読み終わって、少しばかり泣いた。悲しいのではなくて、多分寂しくて泣いた。
 祖父さんの、開拓者としての英雄譚がすっかり昔話になってしまったのが、寂しかった。その事実がというよりも、もう昔話をしたとて煙たがられるだけになってしまった、もう誰も未知の地を踏みに行きやしないのだと分かってしまった祖父さんの横顔をありありと思い浮かべられたのだ。

 ジョウデイ少年は、山の向こうを思い描いていた。周りの大人に「何があるのか」と聞いて回って、何もないとしか答えられなかった少年、彼はいつか馬に跨ってその地を踏むのだろうか。赤い子馬は死んでしまった。その後生まれた子馬は、少年を背に乗せることはできるのだろうか。



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