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生活をする/歩いて帰る

買い物の用事があったので、職場から小一時間ほど歩いて帰った。
住宅街の細々した道を進む。これら一軒一軒一部屋一部屋の中にそれぞれ人が生活をしていることの果てしなさと、私はそれらの殆どに関わることはなく一生を終えるであろう途方も無さを感じる。
生活をしている、どのようであるかは千差万別だけれども誰しも生活をして今ここにいる。当たり前のことのように思えるが、私は時々、それを忘れてしまうこともある。

住んでいる町の境にショッピングセンターができて何年かになる。
この前、そこから先の道がどうなっているか知らなかったので歩いてみることにした。小一時間、道なりに歩いた。知らない花屋さんがあった、急に竹林が現れてのどかな光景になった。
歩道が途切れてしまったので、そのまま真っ直ぐ戻ったら、いつもと知らないアングルのショッピングセンターと出会った。でも、このアングルこそが普段見る光景の人だってたくさんいるはずだ。

旅行で知らない土地に行くことが好きだ。そこには全く違う時間の流れで生活をしている人もいる。私はそこで通り過ぎる誰かとこれから先、関わることはないかもしれないし、あるかもしれない果てしなさに思いを馳せることがある。

普段出会う人も生活をしている。信号待ちでたまに居合わせる、顔だけは知っている人も生活をしている。よく行くラーメン屋さんでたまに話をする店員さんも生活をしているのだ。

人がひしめく都市が好きだ。そこに埋もれる一個体になりたい時が、たまにある。向かいのマンションどころか上階に住む人間のこと誰も知らないけれど、それぞれに生活があることだけをなんとなく認識しながらちいさな部屋に格納されていたい。
海の砂粒のひとつになった心地でいながら、私は私の生活を組み上げて起きては眠り外に出ては帰ってきて。ちいさな部屋でひとり人の生活の果てしなさに想像を膨らませる楽しさを、ゆっくりと味わいたい。

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