木染あめには3年間付き合っている彼がいるとして、

正確には1年半かける2だ。
高校のときに1年半くらい付き合っていて、再会して、二人とも大人になっていて、もう一度付き合った。

彼は金町に住んでいる。けれども木染あめは幼少期に通った病院があって、嫌で、金町では会いたがらない。
だから二人は大体、松戸にいる。

たまに都内にも行く。木染あめは日比谷公園が好きだ。彼女は5年前のスマートフォンで写真を撮る。それは写真用らしく、普段は別のものを使う。写真好きからもインスタ女子からも迎合されないだろう位置に木染あめはいる。彼を盗撮してはよく怒られる。怒られるのが好きでまた撮る。もはや盗撮ではないと思っている。

木染あめはスケッチブックを持ち歩く。無印良品で買った色鉛筆で絵を描く。めったに削らないから使えない色が増えていく。ピンク色のキリンが生まれたりする。木染あめは色に執着がない。順番に使っていくだけだ。

木染あめは何か言葉も書く。読書感想文だったり、詩だったりする。彼女は大体死にたいので、しかし死にたいとそのまま書くのは詩人らしくないので工夫する。

「明日世界が終わるならどうする?」

彼に聞く。あめちゃんに会うかなあ、という彼に、わたしは一人で死にたいなあ、と笑う。フリスビーを思いっきり投げる。さっきそこで拾ったやつだ。深夜3時。土手にて。水の音がうるさい。そろそろ帰りたい。

彼は小さくて青い車に乗っている。
年下のくせに運転が上手いのが癪だけど、便利だからいい。酔うと電話で、へい、たくしー、と彼を呼びつける。迷惑極まりない。

木染あめは980円で買ったサンダルを年中履いている。

ミスiDにエントリーした、と言ったら、へー、と興味なく言われた。3日後、彼は真っ白のワンピースを持っていた。カメラテストで着ろと言う。気が早い。木染あめは黒が好きだった。

木染あめの高校ではバレンタインデーのとき靴箱に「チョコはこちらへ」「チョコ大好き!!」と貼り紙をする男子が続出する。彼女は1年生のとき、それにクリームチーズを入れまくった。2年生のとき、木染あめも何か貼りたくなって

「わたしと生きましょう 木染あめラブレターコンクール」

を開催した。優勝が彼だった。一度別れたときに破り捨てたから現物は残っていない、ということになっているが実際はある。ちなみに準優勝はサクラとして入れておいた自分で書いたやつだ。計2作品、たくさんのご応募ありがとうございました。

木染あめはミスiDになったらそんな彼を自慢したい、

嘘だけど。

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