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夏の雨をずっと好きでいたい、今のところは

Yahooが提供しているお天気アプリはそこそこ優秀で、特に雨雲レーダーは日々の生活になくてはならないものだ。我が家には干し魔と呼ばれる人がいるので、その人の気分は雨雲レーダーにいつも左右されている。お天気アプリを開いて、下部中央に雲の絵。そこに「雨雲あり」と書かれていれば、すぐさまベランダに面している窓へ(ここが1番大きい窓だから)。だが、雨雲レーダーだけを信用してはいけない。今までに蓄積された経験という名のデータと照らし合わせて、複合的に判断するのだ。
なぜならこの雨雲レーダーは少し厄介で、「○○時頃に雨が降りはじめます」と書いてあったとする。今から1時間とか2時間後の話。当然、洗濯物はまだしも、布団を干すのはやめておこうか、となる。家にいるなら臨機応変に対応できるけど、大抵干している間、家にいないからだ。
だが、気づいたら「△△時頃雨が降りはじめます」「◇◇時頃に雨が降りはじめます」と1時間ずつ伸びていく。出先でアプリを開くたびに、少しずつ伸びていく。あれ、と不安になる。これもしかして布団干せたんじゃない?と。その不安は的中して、やがて、文言はこう変わるのだ。

「しばらく雨は降りません」

おい!、とどつきたくなる。あまりにも堂々とした言いっぷりが、神経をゆっくりと確実に逆撫でしていく。
せめて「ごめんなさい…この感じだとしばらく雨降らなさそう…間違えちゃった…」みたいに、しおしおシュン…ってしてくれたら、こっちも「地球を相手にしてるんだからそっちも大変だよね。大丈夫大丈夫、気にしないで〜」って言える。かもしれない。
だけど、そんな堂々と、憮然とした感じで、「しばらく雨は降りません」なんて言われちゃったら、我が家の干し魔の機嫌は絶不調。「これなら私だってこの仕事できるわ!」と怒ってしまう。「1時間ずつ外の天気見て表示を変えればいいんでしょ!できるよ!」って。いやいや、さすがにそんなことはないって。Yahooの人の素ん晴らしい技術があってこそ、開発されたこのアプリ。素人が取って代われるようなもんじゃない。じゃないんだろうけど、私も、ちょっとそう思う。

だから、雨雲レーダーだけを信用してはいけない。己の経験と勘、そして少しの神頼みで予想するのだ。
だけどまぁ、大抵外れる。
なんでだろう。どういう因果なのか。「これはいける!」と思って干すと降ってくるのだ。そして、向こうから迫る真っ黒な雲の存在を確認し、「これはやばそう」って洗濯物を取り込むと、降らない。なんなら止む。取り込んでいる最中に止む。うーん?なんで?
でも、こっちだって純粋無垢な馬鹿じゃない。そんなの長年の経験の中で分かっている。干せば降るし、干さねば止む。何年こんなことやってると思ってんだ、知ってるに決まってるだろう。だけど、それをぜーーーーーーーーんぶ考慮した上で、干すに全ベットすれば雨が降るし、取り込むに全ベットすれば止む。毎回そう。もう本当にそう。
だから、最近は諦めてる。日頃の行いが悪いからだわ、って思うようにしてる。鼻ほじりながら軽い気持ちで雨雲レーダーと雲とアホ面でにらめっこする。あ〜あの雲ソフトクリームみたいだぁ〜って思いながら予想する。だってそもそも、地球相手に長年の経験もへったくれもない。諦める。期待しない。少なくとも、私は。

そんな雨雲レーダーと地球上のちっこい人間の話。最初は夏の雨が好きだって話が書きたかったのに、気づいたら雨雲レーダーの話になっていた。話がすり替わっていることに気づかなかった。

ちなみに今日は賭けに勝った。雨雲レーダーを信じて洗濯物は干さなかった。もちろん布団も。お昼頃まで晴れていたので、孫を見る祖父母のごとく空を眺めていたが、やがて真っ黒な雲の塊がやってきて大粒の雨を降らしてくれた。よかった。賭けに勝った。
だけど、傘を忘れた私の靴は今ものすごくびちゃびちゃのデロデロになっている。こっちの賭けは負けた。

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