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荒川弘と、桜田門-2023/05/29

 今日は農林水産省「消費者の部屋」にて開催されている荒川弘の「百姓貴族」とのコラボ展示―東京農業大学も関連する―を見に行くことにした。


 けれど、唯それだけを見るというのも味気ないので、帰り際に丁度今読んでいる吉村昭の「桜田門外ノ変」にも登場する―というよりも、「桜田門外ノ変」の舞台となる―旧江戸城の「外桜田門」を見に行くことにした。とくに最近は吉村昭の小説を好んで読んでいるため、それらの作品に登場する場所を幾つか巡ろうと思ったからだ。
 電車に揺られて都心へ出た後。霞ヶ関で立ち喰い寿司での昼食を摂り、農林水産省「消費者の部屋」へと入った。社会科見学をしているのか、小学生らしきグループとあちこちで遭遇する。裁判所の前で一回、展示室で一回ずつすれ違った。この企画は初日であるというのに、彼ら20名弱のせいで、消費者の部屋はとても狭くなっていた。
 話は変わるが、荒川弘の作品もまた、父から勧められて読んだ。「黄泉のツガイ」や「アルスラーン戦記」の漫画版などは、新刊が出る度に買っている。「銀の匙」なども面白い作品で、この作品、そして松原始の「カラスの教科書」を読んだことが、生物に興味を持ち出したきっかけだ。そんな荒川弘の漫画であり、農業について・生物について書いてある「百姓貴族」の展示が行われていると聞いたので、今回、参加を決めたのだった。
 この展示は午後からということで、本来であれば午前の間に他所を見て回り、午後に展示を見て帰るつもりだった。ところが、今日は月曜日。行きたいと思ったところが、どこもかしこもやっていない。国立国会図書館には未成年なので入ることができず、ならばと思って調べた国際子供図書館は休館日。同じく上野の寛永寺を見て、そこをへて行こうとした国立科学博物館もやっていない。それでも諦めきれずにあちこちを調べたものの、結局午前中は、町を歩くことができずに終わった。
 また、昼食に食べた寿司は、とても美味かった。調子に乗って普段は食べないガリを二掴み分ほど一気に口に入れ、慣れない刺激で口の中が染まったりもしたが、それでも美味かった。特に最後の方で出された穴子。濃い味をしていて、あれが一番美味かった。個人としては食事に20分ほどかかることを想定していたのだが、あれよあれよと出てくる寿司をついつい手にとっては食い、手にとっては食いとしていると、いつの間にか10貫あったはずなのに、10分で食べ終えてしまっていた。味噌汁もあったのに……そのせいで消化が追いつかず、腹にずっしりと溜まってしまっている。そのおかげで随分と遅く歩くことしかできなくなり、裁判所をまわって農林水産省へと至る道のりは、非常に辛かった。
 そうして至った消費者の部屋には「牧場のジオラマ」や「人工授精道具」などが展示されており、小学生達が熱心にそれを眺めていた。「百姓貴族」は農家視点から書いた漫画エッセイで、食料自給率や輸入餌などについて分かり易く、読みやすく書いてある。


 漫画と共に壁に貼られている農業・酪農知識。牛の糞から作った肥料などの現物が展示されていたが、一番面白かったのは上にも書いた「牧場のジオラマ」だ。「百姓貴族」などで個々の施設の形態については理解していたものの、その集合型ともなると分からなかった。


 ロールサイレージなどの形状から牛舎などまで、全ての位置が一見しただけですぐわかった。荒川弘の実家の牧場は20haほどだそうだが、そんな土地に牛を放牧したりすれば、確かに脱走などもあるだろう。トラック、トラクターや家畜運搬車の模型もあったのだが、思ったよりも大きい。牛一頭の体長が約130cm(和牛の場合)であるため、おそらくはこの車は東京の公道など通れないのではないだろうか。


 一通り展示を見て回り、農林水産省を出た後は桜田門を目指す。今いる場所からそこまで行くのに、裁判所・法務省・警視庁・国土交通省・厚生労働省・海上保安庁etc. ……日本のトップが勢揃いだ。国会議事堂もある事であるし、ここが災害に襲われたならば、日本は果たして大丈夫なのだろうか。
 そうしている内に見えてきたのは桜田門。江戸のころは外桜田門と呼ばれ、大老井伊直弼が暗殺された場所として有名だ。また、「外桜田門」に比して、江戸城本丸に近いために「内桜田門」と呼ばれている場所もある(桔梗門のこと)そうだ。


 雨が降り出してきたため、手早く写真を撮って帰ろうと思い、カメラを向けた際、隣にいた方が止まってくれた。写真を撮りやすいようにと止まってくれたその外国人には、感謝の心しかない。

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