入社して一年も経たずにフィリピンに帰国した同僚のアデルの話

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世間がこんな状況でもあるのでどの業界も離職率がかなり上がってるかと思います。

現に私のホテルでも簡単に転職というワードを口にする人も増えてきました。

私個人としては、早く外国人のゲストが戻ってきて欲しいと常日頃から感じております。

今回は私の職場のホテルで一緒に働いていたフィリピン人のアデルの話をしたいと思います。

なぜ?それはこのなんとも言えない気持ちをnoteにぶつけたいと思ったからです。

アデル・クリスチャン・ガルシア

私はホテルのベルマンとしてバイト時代から3年目として働く上で、様々な外国人の同僚と一緒に働く機会がありました。

元々私は海外留学をしていたこともあって、外国人と関わりを持つことがとても大好きでした。

アデルもその一人です。

アデルは私が入社2年目の時に中途採用でフロントデスクとして部署に配属されました。

最初のアデルの印象は声も小さく内向的で心を開いてくれませんでした。

話題を持ちかけてもいつもニコニコして微笑むくらいでした。

いつも自身なさげでモジモジしてたけど、誰にでも平等に優しいアデルが僕は好きでした。

フィリピンの海は綺麗

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アデルと初めて仕事以外の話をした時に、フィリピンの海の話をしたらリアクションが良かったのを覚えてます。

私は学生時代にセブ島に一週間滞在したことがあったのでアデルにその感動を伝えました。

嘘偽りなく、セブでのシュノーケルの経験は格別で今でも大切な思い出です。

入社して数ヶ月経ったある日、初めてアデルは自分のことを話してくれました。

家が貧しくて、日本に働きに来ていること。

前の仕事では業務内容や人間関係に適応出来ずに、今のホテルに来たこと。

20人も超える大きいファミリーだからアデルもお金をためて支えなきゃいけないこと。

何不自由のない日本という空間で過ごしてきた自分からしたら、アデルの日本で働くことの勇気には頭が上がりません。


擦り減るアデルのメンタル

アデルは声も小さく、モジモジしていたのでゲストとのコミュニケーションがかなり苦手でした。

実際に聞き返されることも多く、先輩も渋々サポートをするような場面がありました。

その度に暗い表情をするアデルのメンタルは擦り減っていたのが分かりました。

外国人の苦悩っていうのは日本人が理解できる範囲ではたかが知れてるのも現状です。

日本人は特に言葉にしなくても感じ取って欲しい人が多いハイコンテクストの文化と言われるので。

ある日久しぶりにシフトが被り会話をしました。

久しぶりに見たアデルの表情はいつも通り暗く、顔に大量のニキビができていました。

メンタルの擦り減りが身体からのサインとして現れていました。

その時が彼のメンタルと身体の限界だったと思います。

僕はこの仕事もう続けられない

ホテルマンとして清潔感は大事な要素です。

髪型一つで上から呼び出され、手直しを命じられることも頻繁にあるくらい重要視されています。

顔にニキビが出来たアデルは休むことを提案されましたが、彼の身体は限界でした。

”もうやめるんだ。ニキビ治らないし続けるの辛い。”

いつもヘラヘラしてたアデルがある日、ロッカーで僕にショッキングな告白をしました。

でも止めるのもなんか違う。

アデル辞めないで、一緒にまだ働きたい。もっとプライベートでもアデルのことを知りたい。

そんな自己中心的な自分の欲望をぶつけるのは間違っている気がする。

アデルからプライベートで楽しかった話は聞けなかった。

日本に魅力を感じ、日本に初めて来た当時のアデルの表情は晴れていただろうか。

その時彼の目に日本はどう映っていただろうか。

その表情は日本で働くことの苦悩によって曇ってしまったのだろうか。

僕ができること

僕は国を離れて何年も働いた経験がないのでアデルの気持ちを理解できるレベルに達していない。

就職先も働き方の選択肢が増え、自分の価値観と企業の価値観が合えば一緒に働く機会も与えられている。

外国人の働き先の幅を広げる風潮はあるが、現に日本で数年働くことはかなりハードルが高いだろう。

アデルが辛い時に僕は何もしてあげる事ができなかった。

ホテルの労働環境は別に悪いわけじゃない。

シフト制で夜勤もあるし給料も低いからみんな大変っていうだろう。

でもアデルが辞めた理由はそこには大きく繋がっていないと思う。

もちろんたくさんの理由があって国に帰ることに決めたのだろう。

そして日本で働き続けることが彼にとっての人生にとって正解だったとも言える立場でもない。

ただ、日本で働いていた時の思い出が充実した時間であって欲しいし、観光地としての日本だけではなく、住みやすい日本としての認識が広まって欲しいと思った経験でした。


最後に

国を出て家族のために働く、日本の文化が好きで働くことを決心してくれた人、日本で働く理由は様々です。

とても勇気がいる行動だと思います。

僕はそんな日本の文化が好きな外国人が大好きだし、そんな彼らに何らかの形で貢献したい。

アデルが日本に帰ってきた時に、会社とアパートの往復ではなくプライベートで友達を作れるような余白のある社会を提供したい。

海外から日本に来た人、日本で生まれた人が共生しやすい日本を作るという決心は僕の人生の指針になりました。

大きなことを言ってるけども自分でできることから貢献します。

長くなってしまったけど疲れちゃったのでここまで。

もし外国人と日本人が関われるようなサードプレイスを知っている方がいたら教えて欲しいです。

では、また。















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