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僕はカレーに恋をして醒めている

昔からの癖で、家でカレーを食べておかわりするとき盛る量が多過ぎるというのがある。
他の献立では起こらない特有の現象だ。カレーは僕の腹具合の目測を大きく狂わせてしまう。

それと家というのもある。
外食ではおかわりの量を冒険しない。
その点家なら最悪食べ切れなくてもあとでまた食べるから大丈夫だ、という算段が働いている。従って盛る量が多くなる。

そして残すこととなる。

1杯目を食べ終え意気揚々と炊飯ジャーからご飯を盛って鍋からカレールーをかけてルンルンで戻った10分後に、同一の人物が苦悶の表情を浮かべている。

さっきまで煌びやかだった目の前にあるカレーは急激に色彩を失いマットな色合いになり、有機性を失い食べ物じゃないただの物体に見えている。

その愛おしかったすべてが今はもう憎悪となってしまった。

食べれるかなーと思って悪戯にスプーンでカレーをイジってみても、そのときのネチョという音と、一緒にスプーン越しに伝わってくるネチョの質感でもう無理だ。
スプーンでカレーを触るのさえ不快になるほど追い詰められている。
諦めて残りを冷蔵庫に入れる。

そしてお腹が空いたときに温め直して食べる。でもそのカレーは一度物体になった経緯を踏んだカレーというのを知っているからなのか、あまり美味しくはない。
もうあの関係には戻れないんだよねって、それはまだ未練を抱く昔の恋人に会ったような気持ちで食べる。お別れだ。さよなら。

そして次また食べるとき、これらをすっぱりと忘れ新たな予感に目を輝かせてカレーを見つめる僕がいる。

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