女性用と張り紙されたコンビニトイレ

コンビニのトイレでは、2つの個室があるときそのひとつが男女兼用のマークが付いていても扉に女性専用と張り紙がされている場合がある。
もちろん私はそれに従い男女兼用のマークが付いた方を利用している。

しかし、漏れそうなときが問題だ。

こんなときに限って共用トイレは使用中で女性専用トイレが空いている。この状況が辛い。
何が辛いと言えば、この女性専用トイレが元々男女兼用のトイレだった過去にある。

例えばこれが駅のトイレや公衆便所のように最初から男女の区分けが成されていれば『女子便所を使う』などという悪魔の囁きは聞こえてこない。

しかし、この女性専用の張り紙のとってつけたようなシワくれた紙ペラと意匠のかけらも無い弛緩し切った手書きの丸文字には、どう見ても悪魔を追い払うだけの力が無い。

葛藤は頭の中で勝手に始まる。

それはお腹に来る。

また、お腹が痛いときほど最悪な想像をしてしまう。

今、マイケルジャクソンのような体勢で律儀に待っている私の横を、無愛想で無神経で無秩序なオヤジが通り過ぎて迷いなく女性専用トイレに入っていくのを見てしまったら、私はその事実に耐えきれず確実にうんこを漏らすだろう。

神はもうすでに地獄に晒されている一人のか弱き人間にそれをさらに課している。

でも私は覚悟を決めた。だって、美しく生きていたいから。
仮に漏らしたとしても、誰かが「君はとても良い奴だよ」と言ってくれるのであれば救われる。
今しばらく、あとは祈るだけになった此の身の、運命(さだめ)のときを待つのみです。


「あのす、すみません何も聞かずこの言葉を読み上げてもらえませんか」

人間の姿に化けて下界に遊びに来てた神さま
『む?よろしい
《君はとても良い奴だよ》…?
(兎にも角にもなににつけて臭いなこの者は)』

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