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AIと著作権(1)

著作権法に関する文章です。3月は毎週水曜日に書きます。

AIと著作権法、という問題は、大きく分けると次の3つの問題に分類されます。

  1. AI学習の段階での著作権侵害 他人の著作物をAI学習に用いることが、著作権の侵害に当たるか

  2. AI出力の段階での著作権侵害 生成AIが出力したモノは、著作権を侵害するか

  3. AI出力の著作権保護 生成AIが出力したモノは、著作物として保護されるか

それぞれについて、おおまかに問題の所在をみてみます。

AI学習の段階での著作権侵害

他人の著作物をAI学習に用いることが、著作権の侵害に当たるか、という問題です。
AIに学習させるデータのなかには、他人が著作権・著作隣接権をもつものがありえます。AI学習の段階では複製を行うことになりますので、ここで複製権侵害の問題が起きます。

著作権法(昭和45年法律第48号)
(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 15 複製  印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること【略】

判例では、ハードディスクへの蓄積が複製にあたるとされており、大量の著作物を取り込む行為は複製に該当する可能性があります。

しかし、著作権法には「情報解析のための利用」は必要な限度で可能(著作権者の許諾などが不要)、という規定もあります。

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第30条の4 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
 2 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。【略】)の用に供する場合

AI出力の段階での著作権侵害

生成AIが出力したモノは、著作権を侵害するか、という問題です。
生成AIは、学習のために使用した著作物をもとに画像や文章などを生成します。そのため、過去の著作物に似ているモノが出力されることがあります。

この場合に、いわゆる類似性と依拠性が認められれば、つまり過去の著作物と創作的表現が共通し(類似性)、また過去の著作物に依拠して作成された(依拠性)ものであれば、著作権侵害が認められることとなります。

そしてこの場合には、著作権侵害の責任を、AIの提供者が負うのかという問題があります。文章生成AIを使って作成した文章が著作権を侵害する場合に、そのAIを開発した者や学習させた者、AIにサジェストした者がそれぞれいるのであれば、だれが責任を負うのかという問題です。

AI出力の著作権保護

生成AIが出力したモノは、著作物として保護されるか、という問題です。

著作権法で保護される著作物とは、「思想又は感情」を表現したものであるとされます。

(定義)
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 1 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

AIによって機械生成された文章や画像は、思想や感情を表現したとは言えないように思えます。一方で、AIは、人間が指示することで出力がされますので、その過程でAI利用者の思想又は感情が入っている、とも言えます。いわば、AIは人間の道具である、という考え方です。

議論の流れ

最近でも、文化庁がAIと著作権に関する考え方についてパブリックコメントを募集しており、その結果が先日発表されました。

文化庁では50年以上前から、「コンピュータ創作物」についての議論を行っています。また内閣府でも、情報財検討委員会が設置されて、議論が進んでいます。
法改正に向けての流れもできつつありますので、そのあたりの状況を見ていきたいと思います。

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