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呼吸【ショートストーリー】

 初めから顔も体も好みだった。何となく仲良くなって、それから親友みたいになったけど、正直ずっと「したい」と思っていた。

 ひとつになってからも、ぼくたちは変わらず親友みたいだった。おいしいパスタも食べに行ったし、きれいな景色も見に行った。真面目な話もふざけた話もたくさんしたけれど、いつだってきみは、ぼくの迷いを解いてくれた。
 
 安いラブホテルの一室で、いつものようにことを済ませた。上手くいかない毎日にイライラしていたぼくは、どうしても今日きみを抱きたかった。絶望も欲望もまとめて全部、きみの中に一気に注ぎ込んだ。

 ぼくの我儘で夜中に呼び出したけれど、本当は少し急いでいた。家族が目覚める前に帰らなくてはいけなかったから。足早にシャワーを浴び、体に纏わりついた匂いを急いで洗い流した。一人残されたベッドできみが泣いていたことも本当は知っていた。

 部屋を出ると西の空にまだ月が残っていた。空の色は一分毎に変わっていく。近づく夜明けがより一層ぼくを焦らせた。
横目で時計を見たタイミングできみは言った。

 「今日で終わりにしよう」

ぼくを見ずに、真っ直ぐ前だけを見ていた。相変わらず綺麗な横顔だった。

「好きな人でもできた?」 

 ハンドルを握った手が汗ばんでいた。苦し紛れの煙草に火を付けた。


「わたしね、幸せになりたくなったの」

「幸せじゃなかったの?」

「ううん幸せだった」

「そか」

 きみ以外、何も捨てられないぼくは弱い。きみがどんなに望んでも、好きだと言わないことが誠実さだと思っていた。それだけの関係だった。

 もうじき朝日が昇る。何度も車で走ったこの道を右に曲がれば、きみの住む美しい街が見えてくる。見送ることしかできない。

 ぼくは彼女の中でだけ息をしていた。彼女の中で果てた時、自分が生きていることを狂おしいほど感じていた。

 溺れていたのは、ぼくの方だった。きみを失ってしまったぼくは、明日から息ができない。

 


文披31題Day6「呼吸」
大反省会。
プロットの段階で漠然としすぎでした。
【生と死のお話】
しか書いてませんでした…

筆が乗っているので、さらさら書けるかなと思っていた自分が甘かったです。
大馬鹿!

何とかDay6完成しました。
性の衝動は生への欲望だと思っています。

今夜のお題は「ラブレター」
うう~ん困った。
わたし今絶賛干物中でして。
干物女ってもう言わないかな。
もしかしたら化石かも(悲しい)
恋してないと書けないのです。

今日は休みなのにどこにも行かなかった。
寝坊して、野球観て(負けて)風呂入って、やっと書き終わりましたとさ。
干物女は野球大好き。この後CSで阪神、横浜戦か巨人vsヤクルト戦でも観ます。



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