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琥珀糖【ショートストーリー】

「八条口には何もなくて、反対側には伊勢丹がある」

 飛行機の時間が迫っていた。関西国際空港までは電車で行く。あまり時間がない。京都駅の八条口で見つけた有名な和菓子店で、琥珀糖を手に取った。札幌駅と違い、京都駅には改札口がたくさんあった。新幹線の乗り場もあった。

 京都駅発、関西国際空港行き、特別急行はるかに乗車した。

 昔流行った歌のように、本気で京都のおばちゃんになりたいと思っていた。きっと地元の人は行かない京都タワーにも、いつか連れて行って欲しい。あなたと見る京都タワーには敵わへんのよとか言ってみたい。 
 
 全てを捨てて、この人を一生護ることがわたしの最後の使命だと本気で思っていた。

 きっと狐につままれていたのだな。何もかもが夢だった。目が覚めた後、呆気なく振られてしまったわたし。今も北海道の大地で生きているし、何も失っていなかった。本当に京都に行ってきたのだろうか?その記憶さえ今じゃ曖昧で遠ざかっていくばかり。

「10年経ってもあなたに運命の人が現れなかったら、その時はぼくに連絡下さい」

「あなたが運命の人ならいいのにってずっと思っていました」

 まるで映画のワンシーンのようだった。

 神様の悪戯で、出会うはずのなかった人に出会った。ほんの一瞬、温もりをくれた人。すれ違い、離れて行った人。もう二度と会うことはない人。どうかどうかいつまでも元気でいてください。そして世界で一番幸せになってください。今も後悔しています。あなたに出会ってしまったこと。わたしはあなたを幸せにしたかった。

 龍宮城からお土産を持たされ、帰ってきた浦島太郎みたいだと可笑しくて笑ってしまった。 夢うつつのまま、玉手箱のように美しい箱をそっと開けてみる。

 ラベンダー、ミント、ローズ、レモン、クリア。5色の宝石は単色の世界で生きているあなたには、どれも見えない色ばかりだった。

 触感はゼリーだ。ミントの香りが切なさを倍増させた。口に含んでシャリシャリと食べる。食べる食べる。食べる。生きている。

 

 わたしは初めて泣いた。壊れた愛の味がした。

 


文披31題Day5 「琥珀糖」
今日もお読みいただきありがとうございます
うんうん
今日もnoteで先に公開

ええねんええねん
それでええねん
(何がー?)
毎日書けばええねん
京都に実在する琥珀糖をイメージして書きました

プロットでは
1.琥珀糖を食べると幸せな夢が見れる
2.琥珀糖を食べると旅行気分が味わえる
3.10年めの結婚記念日は琥珀婚を琥珀贈ると幸せになれる
など考えておりました
全然ちゃうやん!

1.2はマッチ売りの少女的な感じのお話
ショートストーリーのオチとして、夢オチはなしと聞いたのでやめましたー
琥珀糖について調べてみると、京都というキーワードが出てきましたので、こんな話になりました
オチはありません
めっちゃヤバいの書きたいです
(エロとか?)
これからもどうぞよしなに

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