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【試写】『ブルー・バイユー』試写会レポ【06_2022】

ごきげんよう。雨宮はなです。
Filmarksさんの抽選に当選し、参加させていただきました!1月の『前科者』に引き続き、ありがとうございます。初めての会場でしたが迷うことなく辿り着けてほっとしました。
今回は試写会の様子、映画作品についてお話します!

はっきり言って、「日本での8分間スタンディングオベーション」は難しい

第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、8分間におよぶスタンディングオベーションで喝さいを浴びた

そんな文章が宣伝文句になっている今作ですが、鑑賞した限り、「日本でそれは難しいなぁ」と感じました。
映画の出来栄えが悪いとか、まったく感動することがないとかそういうものではありません。ただ、日本人には共感しにくい設定だから、ただそれだけです。

親や自分が移民であること、養子として育つこと、それらが全くないわけではありませんが日本人には縁遠く「こんなこともあるのだな」程度にしか感じられない”設定”である以上、8分間どころかスタンディングオベーションを引き起こすような感情の爆発を生むことも難しいでしょう。それは誰が悪いでもない、致し方のないことです。強いて言えば、そんな宣伝文句で集客を計算した人の読みが悪いかな。

人間としての生死とは:社会的or肉体的

この作品を鑑賞していて個人的に興味深く観ることができたのは、白血病患者とのシーンです。また、その家族との交流がとても好きでした。下手に延命治療をするのではない、「私を愛しているから、私の望むようにしてくれるわ」というセリフに集約された本当に相手を愛することと、その覚悟がとても美しいと感じました。現代では忘れられているものを思い出させるきっかけになってくれることを期待してしまいます。

また、この患者の場合は地震が移民であることもあり、彼女の生死がただ肉体的なものだけでないことも興味深かったです。社会的にすでに死んでいるとも捉えられる、そんな状態で高い医療費を払いながら生き続けることの意味は何だろうか。彼女だけではありませんが、社会的に認められない場所での「生きる」ことの難しさを描いた作品のように私には感じられました。

主人公の就職活動や仕事、里親との関係など節々にそれを感じられます。主人公はどうにかギリギリまでは腐らずに頑張ろうとしますが(過去に腐ってた事実があるようですが)、そう行かなかったときに社会の闇の深さというか構造のおかしさを突き付けられた気分になりました。知ってはいても、やはりいい気分がするものではありません。

それらを踏まえると、「これからしんどい思いをさせるよりは」と自らの手で主人公の命を終わらせようとした母を私は責任感の強い人だと捉えます。結局はやりきる覚悟がなく助けてしまいますが、「養子にすれば幸せに生きられるはず」という希望的観測によって生かすのは本当にその子供のためになるのかと考えさせられました。

幻想的な映像は一見の価値あり!

主人公の精神世界(記憶?)を描いたシーンは幻想的で妖しく、とても印象深いです。主人公の妻が歌う曲の名前でもある「ブルー・バイユー(青い入り江)」に沿った映像は生死の境界に感じられます。水中は胎内の表現かなとも思えましたが、ちょっと違いそうです。

試写会前にはゲストトークイベントが!

ロンドンブーツ一号二号の田村亮さんがゲストでいらっしゃいました。途中までだいぶ緊張した面持ちで話されていましたが、段々と自虐っぽい感じも柔らかくなったような気がしました。

映画に絡める必要があるから仕方ないとはいえ、執拗に「家族愛」や「家族への感謝」を求めた内容のトークテーマは聞いていて少し疲れました。自粛期間の話をどうしても引き出す形になるし、「反省してます」な様子を観なくてはいけないのは辛かったです。もっと、好きなシーンとか自分が演じるならとかそんな質問ではいけなかったんだろうか。

試写会の少し前に50歳を迎えられたとのことで、おめでたいと同時に「そんな年齢なのか!」と驚きました。まだまだ元気に頑張ってほしいです。

さいごに

個人的に感動を得ることは難しかったですが、作品そのものとのご縁は良いものであったと言えます。その国では現実にある社会問題を知るにはとても良い作品だと感じました。けれど、日本に馴染みのない制度や問題であることと、「家族」というものの捉え方が違う文化圏であることからして、特に現代では、感動を得にくいと思いました。

そんな『ブルー・バイユー』は公開3週目に突入!

そろそろ上映枠を絞ってきたり、観にくいお時間が増えてくるので行けるタイミングで観に行きましょう!

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