第二百四十四夜 『野球部に花束を』
慣習というものは人を盲目にさせるものである。
「どうやら、お中元が届かなかったようなので確認取れますか。」
「確認します。紙袋等の用意をしていただけますか。」
「週末、金曜日にもらってきます。」
先日、お送りしたお中元が何点か手元に戻ってきた。
住所間違いなのか、手違いなのか少々慌ただしくしてしまったが、お付き合いのある会社様からのお手紙を頂き得心いった。
私はすぐに彼に連絡を入れる。
彼も納得したように言う。
「時代ですね。しかし、言われてみれば当たり前のことですね。」
手紙の内容をかい摘んで言えばこう言うことだ。
ビジネスにおいて公平なお付き合いをするために、お中元やお歳暮の制度自体を会社として行っていない。
私はまだまだ自身のコンプライアンス意識は低いのだと自覚し、同時にやはり何年も経営している会社のそれらの意識、いや、体制は素晴らしいのだと先人への憧憬を抱いた。
この当たり前は思えば、昭和やもっと古い時代の当たり前なのかもしれない。
それを何も考えずに慣習として行ってしまう。
これは思考を停止していたのだなと。
歳末には株式会社アメリとして、彼と今後こういった慣習をどうするのかを話し合うことをしようではないか。
「せっかくなので、購入したお菓子は奥様とお楽しみください。友人の会社で経営している老舗おかき屋さんです。よろしければ贔屓にしてください。」
「それは楽しみですね。妻と食べさせてもらいます。」
経営者の先達からは学ぶことが非常に多い。
今回は先方の手を煩わせてしまったが、非常に学びの多いお中元であった。
物語の続きはまた次の夜に… 良い夢を。