片耳がきこえなくなった

9月の朝、起きると左耳が聞こえなくなっていた。朝起きて、目眩と吐き気がひどくて片耳が聞こえないことにまで意識はあまり向かなかった。左耳が少し聞きづらいなと思っていたくらいで。

左耳がほぼ聞こえないことに、ワイヤレスイヤフォンをつけて初めて実感した。右耳で聴くと音が鳴っている左側のイヤフォンも左耳で聴くと何も聞こえない。一気に背中がヒヤッとした。

次の日に耳鼻科に行き、予想通り突発性難聴と診断され近所の病院に紹介状を書いてもらって緊急入院となった。8日間入院して、その後も高圧酸素療法で何日か通院して今は2ヶ月に一回、最初に行った耳鼻科に通院することとなった。

今でも症状はあまり改善しておらず、左耳は高音がほとんど聞こえないらしい。ずっと耳鳴りがしているだけで、左耳という機械が故障したかのような故障音みたいなのが24時間響き続けている。

皮肉なことに私は音楽や映画が大好きである。死ぬまでクリアな音でサウンドを楽しめないと思うとかなり絶望した。加えて、友達とかが自分の左側で話していると、ほぼなにを言っているか聞き取れない。お店などで接客されるときは相手の声が7割程度しか聞こえないことが多い。レジを避けるようになり、無人レジのありがたみを身をもって感じている。

しかし、これらの点以外は難聴になってから生きやすくなったと感じる。以前が敏感すぎたのだと気がついた。食器の重なる音や、他人のため息、全てにびくびくしながら生きていた。耳が悪くなったことで、突き刺さるような音を聞くことはなくなった。また、20歳で片耳が聞こえなくなったことに対して親も哀れに思ってくれたみたいで、以前より優しくなった。

なによりも、自分はたとえ結果を出していなくても、自分なりに頑張りすぎると体調を崩すので何事もテキトーに生きていかなきゃいけないという言い訳ができた。さすがに、右耳も聞こえなくなったら落ち込むし、かなり生活に支障が出るので、なによりも自分の健康を優先させていかなければならないという良いのか分からないが自信ができたのだ。すごく救われた。

誰にも言っていないが難聴は神様がくれたプレゼントだと思っている。




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