アスパラガスの茎が咲く

アスパラガスのつぼみの部分。

嫌いな食べ物は何ですか、と聞かれたらこう答えるようにしている。
つぼみというのは正しい表現ではなく、穂先というのは最近知った知識だ。
茎の部分は甘くておいしいけれど、どうも穂先の感触と苦みが気に入らない。

嫌いとまではいかないが、同じようにブロッコリーも、モフモフのところより茎の部分が好きだ。

ポッキーやきのこの山も、本命は持ち手部分だと思っている。

チョコ菓子といえば、幼稚園の頃、チョコが嫌いというようにしていた。

実際に嫌いだったかというとそうでもない。クッキーには劣るが、まあ人並みには好きだった。
ただ、みんなが好きなものを嫌いな自分ってかっこよくないか、などと考えていたからだ。
無邪気なふりしてとんだ恐ろしい幼児である。

そんなひねくれた思想を持っていたから、生クリームが苦手という友だち(意外と多いのだ)を見ては「はは、あの子もかっこつけているんだな」とかなんとか、はた迷惑な想像をするのであった。

この困った性格が治ったかというとそういうわけでもないらしい。

私だって本当はアスパラガスよりも、ドリアンとかパクチーの方が嫌いである。

しかしながら、あの類の食べものたちは、世話話での「何が嫌い?」の答えとして求められていないと考えている。

この質問の答えは相手の予想を超えていなければならない!

という義務感が大人になったひねくれキッズの心に浮かぶのだ。

相手にほどよい驚きを与え、かつ狙いすぎと思われないようにする。
その点でアスパラガスの穂先はかなり優等生なのである。

こんな面倒に考える人はいないから気楽に答えなよ、ともう一人の自分がささやくが、現に私自身がそういう人間であるから仕方ない。

仮にこの話を読んでくれた優しい人が、アスパラガスの穂先について語る女に会ったとしても、どうか聞き流してほしい。



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