えのきとえのきのき

三番目に好きなきのこはえのきだ。

一番は舞茸。
名前、形、香り。どれをとっても華やかである。
二番目は椎茸。
主役級の噛み応えはもはや肉といっても過言ではない。

えのきは三番目といったが、二位と三位の間にはかなりの差がある。
順序尺度の特徴は間隔尺度や比率尺度と違って、間隔が一定ではないことだ。
舞茸と椎茸は順位が変動することはめったにないけれど、えのきに関してはなめこだったりしめじだったりほぼ毎週順位が更新される。

えのきの好きなところはまずその見た目である。
白くて細くて韓国アイドルみたいにかわいい。

あと街中で「えのきもどき」をたくさん見つけられるのもポイントが高い。
えのきみたいな椅子だったり、えのきみたいな街灯だったり。
初観測はたぶんマスターマインドというゲームのピンだと思う。
最近だと横浜にある国際客船ターミナルにたくさんのえのきが生えていた。
近づくとそうでもないが、遠くから見ると圧巻なのでぜひ訪れてみてほしい。

都会に生えているきのこといえば、あの東京都庁のてっぺんにも生えている。いかにも増殖しそうなタイプだから、お勤めの人は注意していただきたい。

えのきはもちろん味も好きだ。
ほんのり甘くて、料理酒みたいなにおいがする。
歯に挟まるけど、食感も唯一無二だ。
白いから歯に挟まっても、ニラとかに比べれば目立ちにくいと思う。

歯に挟まるといえば、隠れた強敵はポテチとフランスパンだ。
一見詰まりにくそうだが、そのダメージは計り知れない。
小さい時フランスパンの外皮が歯茎にぶっ刺さってからは、断面に垂直に歯を入れないよう気を付けている。

きのこは冷凍すると栄養価が増すらしいので、買ったらすぐ冷蔵庫に入れている。
先日うっかりえのきの根元を切らないまま冷凍してしまったのだが、解凍すると水分と泥がいい具合に混ざり合って本当に気持ち悪かった。
直後はさすがにランキングを落としたが、やはり汎用性も高いので3位まで順位を上げてきた。

えのきとは別物だけれど、榎の話も少しさせてほしい。
小学校の近くに大きな榎の切り株がある公園があって、通学路ではなかったが帰り道にときどき寄っていた。
それはもう本当に大きくて、年輪を数えてみようとしたこともあった。

ところがある日その切り株がつるつるの模型のようになっていたのである。

当時は「急に偽物に代わったなあ」とか思っていたが、考えてみれば最初から模型だったのだと思う。
短い間でも本物だと信じていたなんて、おバカでかわいいやつである。

昔はこんな風になんでも本物だと思っていたけれど、いつのまにか簡単には魔法にかからないようになっていて、なんでも最初には「偽物ではないか」と疑うようになっている。
護身術であり処世術でもあるが、こんな風に子供に戻れなくなるのかもしれない。

そういえば今年の格付けには盆栽はなかったことも思い出した。


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