S&Pグローバル、最新決算。データと分析で世界の意思決定をリード【1-3月/Q1,2024】
S&Pグローバルは、データと分析の提供を通じて、世界中の企業や政府がより良い意思決定をできるようサポートしています。また、指数、インデックスのS&P500は、あらゆる投資家のベンチ・マーク(指標、目標)として、欠かせない存在に成長しています。同社のサービスは、投資評価からESGのガイドライン提供まで多岐にわたり、各国政府、企業、個人に対して重要なインテリジェンス、情報を提供しています。
始まりは鉄道会社の財務情報
ヘンリー・ヴァーナム・プア(Henry Varnum Poor)が「Poor's Publishing Company」を1860年に設立。彼は鉄道会社の財務情報を出版することを目的として「Poor's Manual of the Railroads of the United States」を発行します。
そしてルーサー・リー・ブレイク(Luther Lee Blake)が「Standard Statistics Bureau」を1906年に設立。この会社は、企業の財務状況に関する詳細な統計を提供することを目的としていました。
20世紀に入り、1941年、Standard Statistics BureauとPoor's Publishing Companyが合併し、「Standard & Poor's」が誕生。これにより、企業の財務情報と信用格付けの分野で強力な基盤が築かれます。
1966年、 マグロウヒル(The McGraw-Hill Companies)がStandard & Poor'sを買収、S&Pはさらに広範なリソースとグローバルな地位を得ることができるようになります。
S&P500
1976年(算出は1957年)、S&P 500指数のリアルタイム公表が開始。米国の株式市場を代表する主要な指標として、投資家や金融市場にとって重要な基準となり現在に至ります。1993年1月には 初のS&P500 ETF「SPDR」がアメリカン証券取引所に上場、スパイダーの愛称で我々日本人にも、受け入られています。
リーマンショックでの批判
リーマンショック(2008年の金融危機)は、世界の金融市場に甚大な影響を与えました。この危機で、信用格付け機関(CRA)、特にS&Pグローバル(当時のStandard & Poor's)は、多くの批判を浴びました。
当時、無数のサブプライムモーゲージ(信用力の低い借り手への住宅ローン)が証券化、MBS (モーゲージ担保証券)として販売され、S&Pを含む格付け機関は、これらのMBSに高い信用格付けを供与。
後に、多くのサブプライムモーゲージがデフォルトし、MBSの価値が急落。高い格付けが誤っていたことが明らかになり、投資家に大きな損失をもたらし、信用格付けの信頼性が大きく揺らぎます。
格付け機関が高いレーティングを維持していたため、利益相反が指摘されました。発行体が格付け機関に対して支払う手数料を払う形が、格付けの独立性を損なうものと見なされ、格付け機関がリスク評価を適切に行わず、市場の安定性を保つ役割を果たせなかったとの批判が強まりました。
リーマンショック後、S&Pを含む格付け機関は、投資家や規制当局からの訴訟に直面します。最終的に、米国証券取引委員会(SEC)やその他の規制当局により、格付け機関の運営に対する規制が強化され、透明性と独立性の確保を図るための新たなルールの導入へと進んで行きます。
具体的にはS&Pを含む格付け機関は、格付けプロセスの透明性と公正性を向上させるための取り組みをはじめます。
Dodd-Frank法(2010年)の制定により、格付け機関に対する規制が強化され、格付けの開示義務や利益相反の防止策が含まれるようになりました。
リーマンショックは、金融市場における信頼性と透明性の重要性を再認識させるものでした。S&Pを含む、格付け機関は、リーマンショックの教訓を踏まえ、信用格付けの信頼性を回復するための改革に邁進することになります。
新しい、S&P
金融情報と分析
2013年、マグロウヒルは教育部門を売却し、企業名を「McGraw Hill Financial」に変更。新しい名称は、会社の焦点が金融情報と分析にあることを反映しています。さらに2016年McGraw Hill Financialは「S&P Global」に名称を変更。これにより、S&Pブランドは、グローバルな金融情報と分析のリーダーとしての地位を確立することになります。
現在、S&Pグローバルは、信用格付け、リサーチ、データ分析、インデックス提供を通じて、世界中の金融市場における意思決定をサポートしています。主要な事業は
S&P Global Ratings: 世界的な信用格付け機関。
S&P Dow Jones Indices: 世界最大の金融市場指標プロバイダー。
S&P Global Market Intelligence: 金融データ、分析ツール、リサーチを提供。
S&P Global Platts: エネルギー、石油、金属、農産物市場の価格情報と分析。
の4部門に分かれています。
About S&Pグローバル
格付けとインデックスに強み
創業:1860年
上場:1929年( マグロウヒル)
ビジネス概要:金融情報サービス
セクター:金融(Financials)
ティッカー・シンボル:SPGI
年間の売上高:125億ドル(会計年度2023年12月通期)
株式時価総額:1,396億ドル(約22.3兆円,6/28時点)
ライバル企業:ムーディーズ
日本での同業種:日本格付け研究所
従業員:39,950人(2023年12月末)
最新決算より
2024年1-3月,第1四半期決算
売上高:34億9,100万ドル
営業利益:13億8,500万ドル
当期利益:9億9100万ドル
調整後EPS:4.01ドル
調整後営業利益率は、主に格付けおよびインデックス部門の増収により、49.8%へ。
部門別売上高
レーティング(格付け業務): 売上高-10億6,200万ドル(前年同期比+29%)
全体の成長を大きく牽引。発行体による債券発行ニーズが強い。インデックス: 売上高-3億8,700万ドル(同+14%)
NYダウやS&P500などの指数を算出する部門。マーケット・インテリジェンス: 売上高-11億4,200万ドル(同+7%)
企業の財務データやマーケットデータを提供。法人契約が好調。コモディティ・インサイト: 売上高-5億5,900万ドル(同+10%)
エネルギーおよび商品市場のデータおよび分析を提供。モビリティ:売上高-3億8,600万ドル(同+8% )
自動車関連のデータを提供。
通期の計画を引き上げ
S&Pグローバルは、レーティングおよびインデックス部門の好調な成長を背景に2024年12月期の売上高計画を前年比6.0-8.0%増に引き上げ。また、調整後EPS計画も13.85-14.10ドルに改定しています。
自社株買い
S&Pグローバルは、2024年第3四半期までに総額約13億ドルの追加自社株買いを実施する予定としています。
連続増配は51年
S&P500グローバルは、51年間連続して増配を続けている老舗優良企業です。
直近配当実績:0.91ドル
年間配当:0.91×4=3.64ドル
株価:446.00(6/28終値)
*配当利回り:3.64ドル/446ドル×100=0.816%
*手数料、税金は考慮していません。また購入時の株価によって、配当利回りは変わってきます。
まとめ
S&Pグローバルは、金融情報サービス市場において常に先頭を走っており、その多岐にわたる事業ポートフォリオが持続的な成長を支えています。特に、レーティングおよびインデックス部門の強力なパフォーマンスが、今後の業績をさらに押し上げることが期待されます。
誰しもが、情報にアクセスできる時代においてはますます、スピードプラス、その情報の正確性とか信頼性が問われる環境にあると言えます。格付けの伝統と歴史を持つS&Pグローバルの存在は、情報の変化が激しい経済、金融、マーケットの分野において欠かせないものとなっています。
*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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