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ニューヨーク・ダウの秘密に迫る!③

産業構造の変化を捉え、その時代を代表する企業、銘柄に入れ替えを繰り返してきたNYダウ。経済の摂理と言えばそれまでですが、きらびやかな優良企業が入ってくる一方で、少し色あせた企業が抜けていくことになります。そういう意味でNYダウは"ズルい指数"と言えるかもしれません。


除外された企業と採用された企業

1990年以降除外となった主な銘柄

  • USスチール(製鉄業)

  • グッドイヤー(タイヤ製造)

  • イーストマン・コダック(写真フィルム製造販売)

  • ゼネラル・エレクトリック(総合電機)

  • フィリップモリス(タバコ製造)

  • エクソン・モービル(石油企業)

除外された理由としては業績低迷や米国経済におけるそれぞれの業界の相対的な重要性の低下があったとされています。

1990年以降採用された企業

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)

  • ウォルマート(WMT)

  • マイクロソフト(MSFT)

  • インテル(INTC)

  • ベライゾン(VZ)

  • シスコシステムズ(CSCO)

  • ビザ(V)

  • ナイキ(NKE)

  • アップル(AAPL)

  • ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(WBA)

  • ハネウェル(HON)

  • アムジェン(AMGN)

  • セールスフォース(CRM)

  • アマゾン( AMZN)

採用された企業は、1990年以降、現在までのまさしく、米国経済の大きな変化を象徴するかのように消費、金融、ヘルスケア等のサービス産業と、マイクロソフトやアップルに代表されるようなハイテク企業。米国、世界経済が製造業、メーカーの時代から、サービス、ハイテク産業に大きく変わっていく様子がわかると思います。

2020年の入れ替え

エクソンやファイザーが・・

この年には、およそ2年ぶりに入れ替えが行われています。指数から除外されたのがエクソン・モービル、ファイザー、レイオン・テクノロジー。新規に採用されたのが

  • セールスフォース: クラウドCRM(顧客管理)のリーダー企業

  • アムジェン: 革新的なバイオ医薬品企業

  • ハネウェル: 多様な技術を持つコングロマリット

の3社でした。

NYダウの構成銘柄は、委員会によって定期的な見直しが行われ、妥当性を検討し、不定期ですが入れ替えが行われています。ただし、入れ替えの詳しい理由については非公開の部分が多く、2020年の入れ替えは今後の成長が期待できる銘柄に入れ替えられたとぐらいしかわかっていません。一応市場関係者の話しとしては、

  1. Appleの株式分割: Appleの4-for-1株式分割により、ダウ指数における情報技術セクターの比重が減少。これを補うために、テクノロジー関連企業の追加が必要とされた。

  2. 産業の変化: 米国経済の構造が変化し、エネルギーや伝統的な産業からテクノロジーやバイオテクノロジー企業へのシフト。これにより、ダウ指数が現代の経済をより正確に反映するための調整が行われた。

  3. 業績の低迷: エクソン・モービルは石油価格の低迷と需要減少の影響を受け、特にCOVID-19パンデミックの影響で業績が悪化。

との解説がありました。

2024年のアマゾン採用

単純平均型指数でハイテク株比率が低い

NYダウのような株価単純平均型の指数は、銘柄の入れ替えが難しい(株価が高い、いわゆる値嵩株"ねがさかぶ"の影響を受けやすいため高株価の銘柄は選びにくい)という特徴があります。今年3月にアマゾン・ドット・コムが新メンバーとなり、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(以下ウォルグリーン)が除外されました。アマゾンはクラウドサービスで世界トップのシェアを持つ米国の巨大ハイテク企業の一つであり、株価も上昇傾向継続。2022年5月には1/20の株式分割を行い、NYダウへの組み入れも時間の問題と言われていました。

一方、ウォルグリーンは2018年6月にゼネラル・エレクトリック(GE)替わり構成銘柄となったものの、わずか5年9カ月で除外されました。

アマゾンのNYダウ組み入れについて、委員会、指数算出元は「経済の変化を反映し、小売株の配分を引き上げたもの」と説明していますが、市場はハイテク株比率がわずかに高まった程度と見ているようです。しかし、真相はそれまでの

NYダウが「マグニフィセント7(壮大な7銘柄)」のうちアップル、マイクロソフト、2銘柄のみの採用であり、アマゾンやエヌビディア、メタ・プラットフォームズ、アルファベット、テスラは含まれていない、ことによる出遅れを取り戻すことだったと言われています。

昨年来の生成AI相場の影響で、S&P500指数に占める「マグニフィセント7」のウェイトは20%台後半に達しており、米国株が6割以上を占めるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)でも高配分となっています。AIへの集中投資で市場が過熱する中、ハイテク株比率の低いNYダウは、同じ株価指数である、S&P500やナスダックなどから遅れをとらないための入れ替え、と考えるのが妥当だと個人的には思います。

堅実な優良企業がそろう

バフェット銘柄にもなっている

アマゾンを消費関連と捉えるか、ハイテク企業と分類するかは意見の分かれるところです。近い将来には、メタやテスラが採用され、NYダウもハイテク企業にリードされる形で上昇を期待することは良いですが、一方でブランド力があり、配当も堅実に行ない、好業績を地道に続けている、老舗、優良企業の存在も忘れてはなりません。

NYダウの中には、あのウォーレンバフェットが保有する銘柄の上位を占める
アップル(AAPL, ハイテク企業であると同時に、生活必需品を扱う消費関連)やアメリカンエキスプレス(AXP)、コカコーラ(KO)、シェブロン(CVX)が含まれています。長期投資で財を築いた彼が、ずっと保有し続け、これからも保有したいと願う企業がニューヨーク・ダウを構成していることは、長い投資生活を行う上で大きな励みになるのではないでしょうか?

バフェットのバークシャ・ハサウェイ社が保有する上位10銘柄





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