バンク・オブ・アメリカ(BAC)第2四半期決算で堅調な業績:相互補完する主要事業が支え
バンク・オブ・アメリカ(BAC)は、4-6月期(第2四半期)において再び好調な業績を発表しました。4つの主力事業が全体の業績を牽引し、顧客基盤の拡大にも大きく貢献しています。特にグローバル・マーケッツ事業は連続して前年同期比増収を達成し、トレーディング収益も順調に推移。また、投資銀行業務の手数料収入も増加し、総合的な収益力が強化されました。全体として、バンク・オブ・アメリカの多岐にわたる事業がバランスよく成長していることが明らかとなりました。
4-6月(Q2,第2四半期2024年)の業績
経常収益(調整後): 253.8億ドル(予想:253.2億ドル)
1株利益: 0.83ドル(予想:0.81ドル)
トレーディング: 46.8億ドル
*FICC: 27.4億ドル
株式: 19.4億ドル
純受取利息(NII): 137億ドル
貸倒引当金: 15.1億ドル
融資残高: 1.06兆ドル
預金残高: 1.91兆ドル
バンク・オブ・アメリカ(BAC)の4つの主要事業部門
1. Consumer Banking(消費者銀行業務)
第2四半期-売上高102億ドル/利益26億ドル
Consumer Banking部門は、個人向けの銀行サービスを提供し、個人顧客の金融ニーズに応えます。
主なサービス:
預金サービス: チェックアカウント、貯蓄口座、定期預金など。
ローンおよびクレジット: 住宅ローン、自動車ローン、個人ローン、クレジットカード。
デジタルバンキング: オンラインバンキングやモバイルバンキングアプリを通じたサービス提供。
ATMおよび支店ネットワーク: 広範なATMおよび支店を通じたアクセス。
2. Global Wealth & Investment Management(グローバル・ウェルス・インベストメント・マネジメント)
第2四半期-売上高56億ドル/利益10.3億ドル
Global Wealth & Investment Management(GWIM)部門は、富裕層および機関投資家向けに資産運用および投資管理サービスを提供します。
主なサービス:
プライベートバンキング: 富裕層向けの資産管理、財務計画、相続対策。
資産運用: 機関投資家および個人向けの資産管理。
投資アドバイス: 個別の投資ニーズに応じたアドバイス。
信託およびエステートプランニング: 遺産管理および信託の設定。
3. Global Banking(グローバルバンキング)
第2四半期-売上高60.5億ドル/利益21.1億ドル
Global Banking部門は、大企業および政府機関向けに広範な金融サービスを提供します。
主なサービス:
M&Aアドバイザリー: 企業の合併・買収に関する助言。
資本市場での引受業務: 株式および債券の発行支援。
商業ローン: 大企業向けの融資および商業不動産ローン。
キャッシュマネジメント: 企業の現金管理および資金運用サービス。
4. Global Markets(グローバルマーケッツ)
第2四半期-売上高55億ドル/利益14億ドル
世界中の投資家に対して金融商品の取引サービスを提供。
主なサービス:
トレーディング: 株式、債券、為替、コモディティの取引。
マーケットメイキング: 市場における流動性提供および買い手と売り手の仲介。
リサーチおよび分析: 市場動向の分析および投資家向けの情報提供。
リスク管理: トレーディングに伴うリスクの評価および管理。
BACは4つの主要事業部門によって、総合的にバンク・オブ・アメリカの収益力と競争力を強化しています。
BACのトレーディング
第2四半期の決算では、バンク・オブ・アメリカのトレーディング収益が好調であり、特にFICC部門が重要な収益源となりました。FICCの収益は、銀行の収益の安定性と多様性を確保する上で重要な役割を果たしています。株式部門も好調、全体の収益を押し上げました。
*FICCとは、
「Fixed Income, Currencies, and Commodities」の略で、固定収益証券、為替、商品取引のことを指します。
固定収益証券(Fixed Income)
債券: 政府債券(国債)、地方債、企業債、モーゲージ担保証券(MBS)など。
クレジット商品: クレジットデフォルトスワップ(CDS)などの信用リスク商品。
金利商品: 金利スワップ、金利先物など。
為替(Currencies)
外国為替取引(FX): 各国の通貨間の取引。
デリバティブ: 通貨オプション、通貨先物、通貨スワップなど。
コモディティ(Commodities)
エネルギー商品: 原油、天然ガス、電力など。
金属商品: 金、銀、銅などの貴金属および工業用金属。
農産物商品: 小麦、とうもろこし、大豆などの農産物。
FICC業務の内容
トレーディング: 各種FICC商品の売買を通じて利益を追求。
マーケットメイキング: 市場において流動性を提供し、買い手と売り手を仲介します。
リサーチ: 市場分析を行い、投資家に対して情報提供や取引戦略のアドバイス。
リスク管理: FICC商品の取引に伴うリスクを評価・管理。
FICCの重要性
FICC部門は、多くの大手銀行や金融機関にとって重要な収益源です。特に、以下の点で重要な役割を果たしています。
収益の多様化: 金利や為替、コモディティ価格の変動から利益を得ることで、銀行の収益を多様化させます。
市場流動性の提供: FICC取引を通じて市場の流動性を高め、効率的な資本市場の運営をサポートします。
リスクヘッジ: 企業や機関投資家に対してリスクヘッジ手段を提供し、彼らのリスク管理をサポートします。
BACとGS
バンク・オブ・アメリカ(BAC)とゴールドマン・サックス(GS)の比較から、米国銀行の特徴を見てみましょう。
バンク・オブ・アメリカ(BAC)
消費者銀行業務
個人向け銀行業務(小売銀行)
貯蓄口座、チェックアカウント、クレジットカード、住宅ローン、自動車ローンなど
商業銀行業務
中小企業向け融資
商業不動産ローン、ビジネスローン、貿易金融など
グローバル・バンキング
大企業向け投資銀行業務
M&Aアドバイザリー、資本市場、貸出・信用取引など
グローバル・マーケット
金融商品の売買(株式、債券、為替、コモディティなど)
トレーディング業務、リサーチ、マーケットメイキング
資産管理
個人富裕層、機関投資家向けの資産運用
プライベートバンキング、投資アドバイス、信託業務
ゴールドマン・サックス(GS)
投資銀行
M&Aアドバイザリー
資本市場での株式・債券の引受
戦略コンサルティング
グローバル・マーケット
金融商品の売買(株式、債券、為替、コモディティなど)
プロプライエタリ・トレーディング(自社資金でのトレーディング)
資産運用
個人富裕層、機関投資家向けの資産運用
投資ファンドの管理・運営(ヘッジファンド、プライベートエクイティ)
消費者および富裕層管理
個人向け銀行業務
消費者金融、オンラインバンキング、クレジットカード(例:Marcus by Goldman Sachs)
業務内容の主な違い
バンク・オブ・アメリカ(BAC)は、総合金融サービスを提供し、個人銀行業務から商業銀行業務、投資銀行業務、資産運用まで広範囲にカバーしています。BACは一般消費者向けの銀行サービスが大きな比重を占めます。
ゴールドマン・サックス(GS)は、投資銀行業務とトレーディング業務に重点を置いています。特にM&Aアドバイザリーや資本市場での引受業務が主力です。GSは近年、個人向け金融サービス(例:Marcus)にも進出していますが、依然として投資銀行業務が中心です。
このように、BACは幅広い金融サービスを提供し、特に消費者銀行業務が大きな比重を占める一方、GSは主に投資銀行業務に特化していることがわかります。
About バンク・オブ・アメリカ
創業年:1904年
アマデオ・ピエトロ・ジャンニーニによってカリフォルニア州サンフランシスコで「バンク・オブ・イタリー」として設立。この銀行は、特にイタリア系移民を対象にした金融サービスを提供することを目的としていました。
1928年、バンク・オブ・イタリーは「バンク・オブ・アメリカ」と合併し、1930年に正式に「バンク・オブ・アメリカ」に改名。上場:1958年
ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場。1998年
ネーションズバンクとの合併により、現在の形となりました。この合併により、バンク・オブ・アメリカは全米で最大級の銀行となりました。ティッカー・シンボル:BAC
セクター:Financials (金融)
株式時価総額:3,344億ドル<7/18日時点,およそ53.5兆円>
年間の売上高:986億ドル
ライバル企業:JPモルガンチェース(JPM),シティグループ(C)など
日本での同業種:三菱UFJFG(8306),みずほFG(8411),
従業員数:213,000人
まとめ
BACの第2四半期決算では、各事業が堅調に推移しました。ブライアン・モイニハンCEOが述べるように、コンシューマーバンキング、グローバル・マーケッツ、グローバル・バンキング、ウェルスマネジメントの各事業が相互に補完し合い、強固な基盤を築いています。
特に、トレーディング収益が好調で、FICC(固定収益証券、為替、商品)部門が全体の収益を牽引しました。株式トレーディングも市場の活況と取引量の増加が寄与し、好調でした。純受取利息(NII)は年末までに増加する見通しで、金利環境の改善が期待され、投資銀行業務の手数料収入も回復しています。
今後、FRBによる金利引き下げが視野に入る中で、トレーディング収益に不透明性が生じる可能性もありますが、各事業の相互補完による強みが、引き続き期待されます。
ゴールドマン・サックス、最新決算【4-6月】堅調な業績を支えるアプローチ:顧客関係の深化と成長戦略
*ご注意-このnoteは企業IRや直近のニュース等を参考に、一般的な情報提供を目的として書いています。投資家に対する投資アドバイスではありません。投資における最終意思決定は、ご自身の判断でお願いいたします。またデータ等の数字は、細心の注意を持って記載していますが当noteに載せている情報に基づく行動で損失が発生した場合においても、一切の責任を負いかねますので、ご了承ください。
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