見出し画像

閉じていく

木枯らしに葉を吹き飛ばされた木の枝は、骸骨の指先のように、か弱く空を突き刺している。

窓を閉め切った家が立ち並ぶ住宅地に、ひっそりと佇む電信柱達。

電線の網に街が捕らえられ、言葉を失っていた。

夜の瞼が降りてきて、1日が閉じられようとしている。

押しつぶされた夕陽の果汁が、街の空に染み渡って行く。

街を覆う電線の網目を、夕陽が伝い、ぽとぽとと雫する。

動物達の背中を滑り、滴る夕陽の雫は地へ沈む。

風が吹き、からからの落ち葉が、無口な地に折り重なり、蓋をした。

静寂が深く深くなるにつれ、空は濃紺のベールを被り始める。

虫達は、折り重なった落ち葉の影に身を隠し、瞼を閉じた。

虫が一匹、眠りに落ちるたびに、夜空の闇の星がひとつ、瞬きをする。

瞬きをした星のまつ毛からは、ぽろぽろと光が溢れた。

街を覆う電線に絡まり、揺れてはぶつかり、奏でられるのは、子守唄だった。

#小説 #掌編

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?