朗読台本|ブルー・ナイト・サイダー
プシュッ、
音を立てて封を切った。
溢れ出た炭酸水が左手を伝って肘に流れる。
慌てる気にもならなくて
そのまま滴る水滴を地面に託した。
遠くから聞こえるバイクの音を聞きながら
夜の街を眺める。
住宅街のど真ん中、
1Kマンションの一室に
申し訳程度についたベランダで
まだ少し冷たい風を感じながら
炭酸水に口をつける。
午前3時を少し回って
街はもうすっかり暗闇の中だ。
見渡す限り電気のついた部屋はない。
星なんて全然見えない東の空。
薄ぼんやりと明るく光る場所には
一体何があるんだろう。
夜の街さえ明かりを失う今時じゃ
起きているのはきっと眠れぬ人ばかり。
どうしようもない焦燥感。
漠然と不安が募る。
無理もない。
でも、やりようもない。
炭酸水が染みた舌にピリリと残る刺激は
眠れぬ体をむしろ目覚めさせるようで
週のど真ん中にやるには少々目に余る大人の非行だ。
鈍い風のような高速道路の音は
まるで何かに誘い入れるように
絶え間なく、ただ意味もなくぼんやりと流れていく。
こんなことなんてあったっけ。
もちろん長い人生、眠れぬ夜なんていくらもあったけど
こんな風に眠ることをやめた日はあっただろうか。
失敗できない僕は
いつだって明日のことを考えて
それに備えて生きてきた。
眠れなくても横になるだけで体は休まると
小学校の先生に教わってから
ずっとそれを信じてベッドからは出なかった。
明日、授業中や仕事中に眠くなったら困るからと
別に特別な1日でもなんでもないのに
ただそれだけのことに怯えて
僕はベッドから出なかった。
いま、世界がじわじわと変わろうとしている。
大胆な人間こそが何かを得る時代。
僕はこのままでいいのだろうか。
ボトルの中、
好き好きに浮かんでいく水泡越しに街を見る。
この空に朝日が昇るまで
この非行をもう少し続けよう。
明日は明日、
きっとどうにでもなる。
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朗読シナリオ 作品一覧&ルール
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