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徒然ならないひとりぐらし開始

引越しをした。
20年を共に過ごした大阪の地を離れ、新幹線に飛び乗り3時間。
背中に雄大なマウント富士を背負った町へと辿り着きました。

引越し準備は二週間前から始めていたため、服や本の荷物だけではなく洗剤、ハンガー、フライパン、コンソメに至るまでありとあらゆる生活必需品を段ボールに詰め込み単身パックでドン!
ダンボールの七割は本・漫画だったのでなんでこんなに買い込んだんや〜と泣きながら(ほんとに泣いた)詰めた。可哀想。

当日は、荷物が届く時間が早めだったから前乗りでホテルに泊まった。朝はチェックインの時間までおさるのジョージを見ながらダラダラと歯磨きをし、寝癖も直さず町へ繰り出す。スーツケースのキャスターが壊れていてかなり歩きにくかった。

父が住んでいるところは大阪よりもいくらかマウント富士に近いので朝から手伝いにやってきた。駅で合流し一緒に不動産屋を目指す。部屋の契約をした時も父が横にいたため、いい加減お礼を言わないといけないとは思いつつ、父の扶養から外れることを喜ばずにはいられない。ヒタヒタと感じていた「父の働きの上で生きている」という屈辱や悔しさから晴れておさらばである。
不動産屋の手前まで来ておきながら「事前連絡とかもらっていないけど本当に鍵はもらえるのだろうか」「なんでいまさらそう言うことを言うんだ」などの情けない会話をしながら扉を開いた。自動ドアじゃないからスーツケースがガタガタ当たる。ほらやっぱ新しいのいるよ。

心配は杞憂に終わり、すんなり鍵をもらえた。受付の方が丁寧に説明してくださる前で、先週から引き続きひいている風邪による咳が止まらなくなり、大泣きしながら返事をする始末。受付的には一番嫌な客である。
懇切丁寧に説明してもらい、すべてに全力で相槌を打ったが、「室内にある住居説明書」というものが室内になかった。マンション独自のルールがあるらしいゴミの出し方がわからない。ポストのダイヤルの番号がわからない。宅配ボックスが開けられない。懇切丁寧に説明してくれた受付の人の顔が歪む。鈍く色が混ざり合って、泥人形みたいになる。不安が募りストレスがたまり胃炎になり寝込む。ふりだしに戻る。
キリキリと腹が痛くなったので翌朝父に連絡を入れてもらった。果たしてどうなる?

さて、時間を少し戻して部屋へと向かう。駅からトコトコ歩いて5分。実家が駅から徒歩1時間だったのでありえない近さに泣いた。駅徒歩5分って現実にあるんだ。
もちろん内見で一度来ていた家だけど、改めて見るとひ、ひろい、、、。布団を敷いたらいっぱいになるようなプライバシーもクソもない部屋(キッチンの横にDIYの壁で区切った区間)で暮らしていたので私なんぞにこんな大層な部屋宜しいんですか!?となり恐縮しすぎて手持ち無沙汰になった。
こういうときに空気の読めない父親がついてきてくれて本当に良かったと思う。父の最初の発声は「Wi-Fiあるやん」だった。お前まじ。おまえ。しかし一週間ほど前からWi-Fiの契約に関してどうしたもんかなとすったもんだしておりボタンを押せば契約完了くらいのギリギリまで進めていたので先に存在を確認できて良かった。

そして我々は世界と出会った。荷物も届いていない家には何もないので買い出しに行った。物干し竿とか何かに使えるであろうカゴとか。ホームセンターみたいなのはあるのかと歩いていたら、ホームセンター兼業務スーパー兼パン屋兼リサイクルショップ兼エトセトラの激ヤバデカ施設があり全てのものがそこで揃った。世界にあるもの全部ある店、と読んでいたらいつの間にか呼称が世界になった。ひとり暮らしの不安が世界があるという勇気で全部どうにかなる気がしてきた。

そうこうしているうちに単身パックでドン!とやってきた段ボールたちの2割をほどき、必要な書類や小物だけを出してあとは本しかないのでクローゼットにゴン!
せっかくクローゼットが広い部屋を選んだのに半分は本で埋まりお気に入りのワンピースたちは居心地が悪そうに肩を寄せ合っている。早く本棚を買ってあげないと。
なんせ初めての一人暮らし。いくら生活必需品を詰め込んだといえど部屋はかなり殺風景である。洗剤や食器を然るべきところに仕舞おうにもゼロスタートには然るべきところがない。物を収納するものがいかに必要かを思い知った。ちなみにこのあたりで大阪からはるばるやってきた母親も合流している。駅遠地味田舎家の人間には駅近の家がどれほど便利か思い知ってほしい。

偉いので引越し当日に届くよう手配していたベッドがちゃんと届いた。親子総出で組み立てる。デザインだけで選んだベッドは安物なので、接続する穴が大きくズレるところなどがありながらも(なんでやねん)どうにかこうにか出来上がった。ベッドがあるだけで家感がすごい。ベッドで寝るのが苦手で布団で寝てた民にベッドはかなりハードルが高いが、家に何にもないんだからベッドおかなきゃしゃあないよ。
ちなみに東西に細長い部屋に南北の向きにベッドを置くことで北枕を実現し運気アップをキめる!そういえば身動きが取れない部屋だったから仕方なくだけど実家でも北枕をしていた。てことは運気は上がらないかも、、、ふざけるな。
このベッドの置き方は映画「勝手にふるえてろ」リスペクト。
カーテンは姉と知り合いにもらったでかい布3枚を百均のカーテンレールクリップで止めてカーテンぽくした。これは映画「わたしをくいとめて」リスペクト。
布はチャイハネであつめたものでゴン!これは三木聡監督作品リスペクト!

1日目の仕事はおおかた終わって、とりあえず人間が住める部屋にはなった。ゴミの捨て方はわからないが。
ラグがないから床にダンボール敷いてるし机ないからダンボールおいてるしなぜか椅子だけぽつんとあるけどなんとかなった。

夜は駅の近く(つまり家のすぐ近く)の看板に海鮮ってかいてある店に行った。手が届かないほどではないけどセレブの食べもんだよ…というような金額と内容のお店でドヒャ〜と大汗かきながらも満腹食べた。なんたってまだ親の金だからね。
地酒がアホみたいに美味くて鯵のお造りとアホみたいに合うのでバクバク食って呑んでたら酔っ払って家帰ってバタンキューでした。おやすみ。

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