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【映画】【短日記】パーフェクト・デイズ

レイトショーで『パーフェクト・デイズ』を観てきた。
ヴィム・ヴェンダース×役所広司が東京を描いた作品。

役所広司さんがカンヌで賞を取ってから、かなり客入りがあって鑑賞を先延ばしにしていた。叙情的なモンタージュで紡がれる主人公・平山(役所広司)の仕事と日常の小ささと規則正しさ、それゆえの揺らぎが印象的で、なるほどエンドクレジット最後には日本語特有の語彙とされている「木漏れ日」という語が辞書的に紹介されていた。

キャッチコピーは「こんなふうに生きられたら」。
けれど、平山は明確にかつて持っていた何かを失って、それでも手のうちに残っているものを慈しんで生活をおくっている人として描かれている。平山の生活に美しさを見出し、すれ違う人や風景の美点をみつけて微笑むさまに共感を覚えつつ、そのことによって平山の(あるいは彼のように市井に生きる知的で静謐な隣人の)滲ませる激情から目を背けたり、やはりそこにある悔恨をなきものにしたりしないようにしたい。なんにせよ美しい映画だった。役所広司の表情筋はロバート・デ・ニーロに肉薄していたし。

追記
平山の佇まいからベネディクト修道会の標語である「祈り、働け」という文言を連想していたが、彼のキャラクターが形成される初期段階に僧侶のイメージが明確にあったようだ。公式HPはインタビューが充実している。