全部抱えて、夜を越えて。
あの人にもう会えないと知った日、帰りの電車を待つホームで気づいたら涙がこぼれた。
夏の終わり、少し日が短くなった18時のホームには生ぬるく湿った風が吹いていた。
友達と別れて電車を待っていると、ふと、あいみょんの初恋が泣いているを聴きたくなった。
夕暮れの街、周りの音を全て飲み込むようにイヤホンのボリュームを上げる。
気づいたら、私は涙を流していた。
その時やっと、あの人のことが好きだったことに気づいた。
遅いよ、私。
あの人がちょっとしたことで褒めてくれたとき、すごく嬉しくて何回も思い出したこと。
あの人のちょっと変わった発想がなんだかツボだったこと。
もう会えないと思ったら、なんだかものすごく寂しくなって、もっと言いたいことが沢山あったことに気づいて、初めて人との別れで後悔した。
あの人が私のことをどう思っていたのかなんて知らないし知る由もない。多分、絶対、私のことなんてなんとも思っていなかったと思う。
勝手にドキドキして、勝手に辛い時に思い出してみて、手が届かないところに行ったらやっと後悔して、私ってば馬鹿だなぁ。
あの人と付き合いたいとかデートしたいとか、あんまりそうは思わなくて、ただ会って話がしたいだけなのに、それすらも叶わないのが悲しくてぽっかりと穴が空いた感じ。
思い返してみると、不思議とあの人に出会ったのは色々と精神的に参っていた頃で、その根源がなくなってしばらくしたら会えなくなった。
だから、きっと何かしら意味があって出会って、何かしら意味があって会えなくなったのかなと思う。いや、そう思うことで私の中の何かを風化させたくないだけかもしれない。
恋は人をポエマーにすることも、
死ぬほど好きという表現があながち大袈裟ではないことも、
言いたいことはちゃんと伝えなきゃいけないということも、
全部ちゃんと痛いくらいに分かった。
またどこかで会えるといいなという気持ちと、もう一生会えないほうがいいやという気持ちとで、なんだかよく分からない気持ちを引きずって歩いている。
ただ、ふとした時に思い出してはどこかで元気にしていますようにと願う。
後悔もあるけど、多分きっと私の人生に必要な人だったと思う。本当はちゃんとありがとうを言いたいけど、それは叶わなさそうだからせめて、これから出会う人、今周りにいる人との縁を大切にしよう。
そう思って、後悔も感謝も全部持っていって、今日もまた夜を越える。
追記:数ヶ月経ってやっと納得のいく形で書けました。今までで一番悩みながら書いた記事です。