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沼底エッセイ

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友人たちの何度も読みたい粘土系セックス・ノート
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濡れてなお香る梅雨

濡れてなお香る梅雨

梅雨に入ったと勢い勇んで、強く雨が降っていた。
傘をさしていてもバッグと足元はひどく濡れ、駆け込むように彼の店に入る。
店内には雨音も街のざわめきもほとんど届かなかったが、時おり雷の光が暗く冷えた部屋を照らした。
調理のために彼が厨房に火を入れたからだろうか。少しだけ店に暖かさが宿った。

火から少し離れ、ビールを開ける。
さっき走ったせいで泡が勢いよく吹き出した。
景気がいいね。
今日も多分、こ

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