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2021年同人誌装丁のまとめ

はじめに

あれよあれよという間に月日が過ぎ去り、以前書いた記事から一年が経とうとしています。ちなみに私は昔々運営していたサイトの更新も毎日する時もあれば半年放置することもある気分屋&締め切りがないと動けないタイプの人間でした。なんも変わってないな。
この一年、プライベートでもいろんなことがあり、結果的に新規で書き下ろした本は3冊、これまで書き溜めていたSSを再録したものを改稿した本が2冊(仕様と組版を変え再販したものもあるのでこれを含むと3冊)で計5(6)冊。去年のペースが異常だったこともありますが今年は環境変化等々で普通に忙しく、創作として本格的に動けたのは9月くらいからだったかなという印象です。
ということで今回も昨年同様、本の装丁についてをメインにお話できればと思います。備忘録程度のものですが、何か参考になることがあれば嬉しいです。
なお、前回の記事にも書きましたが基本的にすべて夢小説本です。

Oh my Wonder Days!

表紙:ミランダスノーホワイト130kg
本文:ニューシフォンクリーム75.5kg
遊び紙:グッピーラップ
加工:正方形断裁/本文単色印刷(ネイビーブルー)/中綴じステッチ
印刷所:オレンジ工房
発行イベント:5月9日 Your dream Story 2

オレンジ工房様(https://www.orangekoubou.com)の、期間限定セットだった「中綴じステッチセット」があまりにも可愛かったのでどうしてもこれで本が出したいと駄々をこねた結果出た再録本です。主人公に宝石に関連する設定があることもあり、全体的に宝石をイメージしたデザインを散りばめ、また本編とは繋がらない日常の小話がメインの短編集なので「なんでもない青春の日々」感が出るといいな〜と思いながら作りました。

本文色刷り、去年も散々やりましたがやっぱりかわいい。ニューシフォンクリームが明るめの白い紙なので、青色がよく映えました。全体に青を使ったのは人魚のお話だからです。短編集でページ数のシビアさもなかったため、正方形断裁に飾り罫線とかなり見た目にも遊びました。かわいい。

ちなみにこちらについては、「中綴じ絵本セット」として本文フルカラーの期間限定セットをその後オレンジ工房様で出してくださったので、再版分は表紙等は同じで本文のデザインをガラッとフルカラー仕様に変えています。フレームをつけて、フォントも変えて。ちなみに、初版のフォントは「源暎ちくご明朝」、再版は「筑紫アンティーク明朝」です。こちらもお気に入り。

Contigo, pan y cebolla!

表紙:ファーストヴィンテージターコイズN 172kg
本文:モンテシオン81.5kg
遊び紙:ポルカ カナリア
加工:本文単色印刷(黒藍)/表紙白印刷
印刷所:大阪印刷所(おたクラブ)
発行イベント:5月29日 Your Make Me 2nd

Webオンリーのテーマが「結婚」だったため、この前作で結婚した二人の話をまとめたこれまた再録本です。記念誌のつもりで刷ったので極小部数だったのですが、それでも特殊加工させてくれる大阪印刷所様(https://otaclub.jp)のありがたいところ。
内容がめでたしめでたしの先の、ある種おまけの話であることもあり、デザインもかなりシンプルに、そしてほっこりするような見た目にしました。色遣いはカプのイメージカラーにしようと決めていたので、絶対この黄色を出すぞという心算で白印刷を使いましたがとってもきれいに出てくれて安心。フルカラー印刷なのですが特色刷りのようにも見えるところがお気に入りです。おたクラブさんはRGB印刷にとても強いのでパキッとした色もかなりしっかり出してくれますが、可読性を考え文字部分は彩度を落とすなどしています。

本文は66ページしかないのですが、モンテシオンが嵩高の厚いふわっとした紙なので、背幅4mm程度あります。背表紙に文字が書ける程度。
遊び紙も黄色にして、春らしいカラーリングになったなと思っています。
そしてこの本もあまり組版にシビアにならなくて良かったのでかなり遊んでいます。本文フォントは筑紫B明朝だったかな。罫線や挿絵もちょこちょこ入れて、本文の色刷りも相まって少し子ども向けの文庫本みたいな風合いが出たなと思っています。

Oh my Wonder days!2

表紙:トレーシング85kg 紫×ターコイズ
本文:コミックルンバ ブルー
遊び紙:上質紙 空
加工:正方形断裁/遊び紙特色印刷(ターコイズ)
印刷所:サンライズオンデマンド
発行イベント:6月20日 オクタマーケット

これもサンライズオンデマンド様(https://www.sunrise-os.com)の「ホワイト&ブラックセット」の夏期間限定のグラデーショントレペ表紙がどうしても使いたい〜!!と駄々を捏ねて出しました。短編集のつもりだったのに筆が乗って80Pくらい書いたのは今でも笑える話です。5月に出した本と番外編短編集のシリーズという位置付けだったのでデザインもそちらに寄せました。タイトルロゴは同じ。ちなみに裏表紙に使ったフレーム素材も同じです。ここは統一性を重視しつつ、テーマが「飯テロ」だったので海中にあるレストランのパンフレットのようなデザインにしようというコンセプトでした。
色付きのトレペに白印刷のみというのが実は初めてだったのでどう表現しようと思ったところもあるのですが、これはこれでいろんな表情の出せる紙だなと思いました!透け感が素敵!海面を印刷ではなく遊び紙印刷で表現したのがこだわりです。

これですね。本来セット内で遊び紙の印刷はスミのみのところ追加料金で特色にしていただけました。見積もり時点でかなりいろんなお話を聞いてくださって感謝しきりです……おかげで理想通りになったなと。

これも組版はいつもよりゆとりを持って、飾り罫線も入れて。これも、「Contigo, pan y cebolla!」と同じく筑紫B明朝ですね。可読性の良さの割に普通の小説よりも凝って見えるかわいい本文フォントとして気に入っています。

春隣にてきみを待つ

表紙:OKフロート ホワイト 120kg
本文:書籍用紙72kg
遊び紙:タント キラ K-54
加工:空押し/トレペ帯
印刷所:HOPE21(帯:プリンパ)
発行イベント:10月10日 どちらまで?

HOPE 21様(https://www.hope21.jp)は、この夏の季節限定セットからなんとオンデマンドでも空押しが出来るようになりました!!!!!しかもかなり安価!!!すごい!!
冬に始まり彷徨いながら春に向かうなかなか苦しいお話だったので、デザインとすると柔らかく水彩テクスチャで春の雰囲気を出しながら、タイトルロゴの墨だまりを調節したり、全体の印象は真っ白にしたり(桜は空押しなのでともすればほとんど見えません)して、春の手前、まさに「春隣」の冷たさも感じられるように考えてこうなりました。OKフロートは熱を加えるとその部分が透ける特殊紙なので、その効果を利用し遊び紙のピンクがうっすら見えるようになっています。

空押しの裏面。透かすときれい。あとこの本で知ったのですが、OKフロートとOKムーンカラー(OKフロートのパール紙です)はかなり柔らかい紙なので厚めの本を作るのにおすすめです。この本もとっても開きやすい。
本文は普通の書籍用紙なので画像は割愛します。一応この本原作(アニメ)がネタバレ厳禁ジャンルなので…笑
ちなみに帯やあらすじはミステリーをイメージして書いたものですが中身は特段ミステリーではないです笑 帯のフォントを筑紫明朝にしたらなんとなくシビアな雰囲気が出たような気がします。

はるのひなた

カバー:ロベール ホワイト 110kg
表紙:パルルックトワイライトゴールド 185kg
本文:書籍用紙クリーム62kg
遊び紙:クラシコトレーシング ピンク 52kg
印刷所:コミックモール
発行イベント:12月12日 呪転じて恋となすDR2021

そういえばカバーをつけた以外は一切の特殊加工をしていない久しぶりの本です。コミックモール様(https://comicmall.jp/wiki.cgi)といえばベルベットPPやトワイライトPPも使えることで有名なのですが、今回は表紙にせよカバーにせよ紙そのものの質感や色が書きたい話にぴったりだと思ったので。トワイライトPPはいつか何かで使いたいんですけどね。
前作も春のイメージのデザインをしたこともあり、こちらについてはなんとなく「春隣」と印象が被らないようにしたい(ジャンルは違うんですが)ということと、結構この一年パッパッとジャストアイデアで作ったデザインをそのまま採用した表紙が多かったので、要素も含めきちんと練ろうと思いカバーは何案か作成しました。
ロゴは昨年の「52ヘルツの人魚」と同様、Frescoで手書きし軽やかな春の印象に。白を基調とした前作と対照に全面に水彩テクスチャを貼りつつ、普段あまり入れないあしらいを増やしながらごちゃつかないように。特にあしらいの使い方は、デザインの指南書や実際の本、同人誌の画像などを見ながら何が適切か研究しました。
カバー下がぐっと情報量を絞ったデザインであることも含めてかなり凝った、がんばった装画になったかなと思ってます。

前作と比べると全体的に春爛漫というか、前作が桜の咲く前だとするとこちらは桜の舞い散る季節っぽいですね。花びらの印象があったのでノベルティはクリアしおりに桜の花びらと椿の花を。花びらがしおりになるの素敵だなと思って。
こちらの本文フォントは筑紫オールド明朝です。今まで文庫本や文字数の多い本については源暎ちくご明朝がほぼだったのですが、このフォント試しに使ってみたらとっても雰囲気があってめちゃめちゃ好きになってしまいました。定期的に使いたいです。

今年デザインのためによく使ったもの

これも覚書程度のものですが。
一番お世話になったのは「mojimo」!!フォントワークスのサブスクリプション定額フォントサービスなんですが、毎月3フォント使えてなんと!110円!!!憧れの筑紫明朝も!アンティーク明朝も!使える!!!

すっごいおすすめです。この価格でこのクオリティのフォントが使えるのは本当にありがたい。今年の本は概ねこの中のフォントに頼ってます。

あと私はデザイン表紙を作るのに、絵を描けるわけではないのでさまざま素材を使っていて。前から本当によく使っているのはイラストAC様なんですが、素材集をいただく機会がありがたいことに結構あったこともあり、特によく使ったものをご紹介します。

正直、言わずと知れた…な気がする井上のきあさんの花花素材集。後半本当にお世話になりました。アオリにもある通り、本作りや表紙作りをすることを意識されたかわいいお花の素材ばかりで、素材自体のクオリティもそうなのですが加工がしやすくて…!!もちろんそのまま使ってもかわいいんですが、「春隣」も「はるのひなた」もIllustratorの画像トレース機能でベクターデータに変換して加工しました。
主役に出来るお花の素材が欲しい方におすすめです。

まだいろいろあった気がするのですが、そろそろ記事も長くなるのでこの辺りで〆ようと思います。正直今年は本当にそんなに本出したりは難しいだろうな…と思うようなことがいろいろあり(皆さん、身体は大事にしましょうね)諸々スケジュールが狂ったり狂ったスケジュールで原稿したりしてたので、来年はもう少し計画的に生きられたらな……とは思ってます。狂いも車も急には止まれないものですが。
なんだかんだそれでも今年も去年は出来なかった加工や装丁がいろいろ出来たので、来年も何かしらチャレンジが出来たらいいなー!と思っています。
結構、noteを見てTwitterを覗いてくださったり、質問をくださったりする方が多くて嬉しいなー!と思っていたので、もしこちらを見て質問がある方などいたらコメントでもなんでもお気軽にどうぞ。以下にお題箱も置いておきます。

2021年ゆく装丁くる装丁という感じで、今日の21:00から本垢で装丁スペースもやろうかな〜と思ってますので、ご興味ある方はゆるっと聞いてみてください。かなりゆるゆる話すとは思いますが、質問など送ってくれたら話せることは話します!

ではでは長くなりましたが、皆様どうぞ良いお年を。今年はずっとWebオンリー中心でしたが、最後の最後にビッグサイトで開催されたイベントに出られたことが本当に良い思い出です。あの活気が嬉しかった。来年はどうぞ状況がもっと良くなって、皆さんがまた賑わうイベントに参加出来たら嬉しいなと思います。

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