ミステリークロック
中学の担任が不思議な置き時計の話をした事があった。その時計は長針と短針を動かす駆動部が見当たらなく、針だけが空中に浮いているように見えるという。
この話を何故かずっと覚えていて、15年後のある日、その時計が実在する事を知った。
カルティエのミステリークロック
世間ではそう呼ばれている、そのカラクリ置き時計は、二枚の丸い水晶体に長針短針が描かれていて、それ自体が歯車のように回転して時を刻む。一流ブランドの技術力とデザインを駆使して作られた一点モノは、受注者の家に直接届けられるので、世間の人が目にする事は殆ど無いという。
カルティエの腕時計だったら父親が持っていた。何年か前に修理するなら譲ると言われ、銀座本店にオーバーホールを頼んだ事がある。父親は、“文字盤の7時の位置に“CARTIER”と書いてあるから本物だ”と言っていたが、まずは鑑定をお願いした。
ブランド店という所は何か場違いな感じがして落ち着かないので、鑑定待ちの時間が苦痛だったが、ふとミステリークロックの話が頭をよぎった。思いきって女性店員に聞いてみると、
「30年カルティエで働いていますが、あるデパートに飾っていた時期があり、一度だけ見た事があります」
と教えてくれた。更に値段の事を訪ねると、指でチョキを出し、これくらいと言うので、
「置時計に2千万もするんですか?!」
と驚いたところ、その店員は笑みを浮かべながら即座に訂正した。
「桁が違います。2億です」
自分が想像つかない程の財力を持った人がこの世には存在するのだ。世界の広さを垣間見た瞬間だった。
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“MYSTERY CLOCK” by Miboo https://link.medium.com/TEglUx49a9
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