シネマセラピー2 孤独を感じているあなたに
シネマセラピー
映画をひとつ、心の小さな処方箋に
(ネタバレ注意)
1992年映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』
原題は『NIGHT ON EARTH』。
いつも邦題には悩まされるものですが、この作品に関してはその内容のコケティッシュさから、『ナイト・オン・ザ・プラネット』がとても似合っている気がします。
ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキ。
5つの都市で、同時刻に走るタクシーで巻き起こる、ドライバーと乗客の物語。
一見、バラバラに見える人間たちと出来事ですが、始まりから終わりまで、ちゃんと一貫性があるのです。
人生いろいろ、と言ってしまえば簡単。
世界中どんな土地にいても、どんな時刻、どんなタクシーに乗っていても、人間らしさは爆発です。
まさに、夜の地球をつついて、つまみ食いするような感覚。
幸せのかたちは人それぞれ。不幸もまた、人それぞれです。
どっちが上で下で、辛くて楽で、なんて、測れないものと思ってまず間違いない。
人種も、性別も、差別も、好みも、生き方そのものも、何でもアリ!
この世界なんて、そんなもの!
まずはそう認めてみることから始めませんか?
主張を止めてみる。
私のほうが、あなたのほうが、
もっとこうしたほうが、もっとこうしないほうが、と考えるのを止めてみる。
思考を止めて、ただ味わう映画がこれです、『ナイト・オン・ザ・プラネット』。
そしてこの星を、高い高いところから見ようとしてみる。
自分の場所はどこに見えるでしょう?
どの程度のものに、見えるのでしょう?
作家のマルセル・プルーストは著書『失われた時を求めて』の中でこう言います。
「発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ。」
この世界、何でもアリなのだと受け入れてみたとしたら、何が見えてくるのでしょう。
今、この時間にあなたはどんな過ごし方をしていますか?
孤独の大きさは如何ほどですか?
同じ時間に、世界ではどんな人たちがどんなことを思っているのでしょうか。
わからないけれど、きっと想像以上のことがあらゆる場所で起こっているでしょう。
そして、ひとつひとつの本質は、どこにいたって何も変わらないのかもしれないのです。
何でもアリだし、みんな同じだし、何も変わらない。
だとしたら。
この星にはあなたと同じ孤独がいっぱい。
いっぱい、ひしめき合って、ひとりひとりに降り注ぐのは、
みんな同じだというあたたかさなのかもしれません。
世界を受け入れるとは、そのちょっとしたあたたかさを感じてみることなのかも。
ぜひ、ジム・ジャームッシュ監督の、世界を包むあたたかさを感じ取ってみてください。
孤独のあたたかさで、世界はつながるのかもしれません。
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