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第184回 都からの使者 の巻

■都からの使者はいったい何のために?

都から使者が道真に謀叛計画の聞き取り調査を行います。

でもこれ、いったい何のために?

おそらく宮廷内は道真冤罪の噂で蔓延していたことでしょう。

状況を考えても謀叛をするメリットもないし、仮に新帝を立てたところで道真が政府を統率するほどの力はありません。あきらかに政敵を追い落としすための冤罪ということは誰もが知るところだったと思われます。

政府は信用を取り戻すべく「道真の自白」をゲットし、それを根拠に「やっぱり謀叛はあった!」と言いたい・・・そんな意図が透けて見えます。

そこで道真の自白をゲットする使者が人選されます。これが興味深い。

藤原清貫(きよつら)が選ばれました。

これはおそらく道真が話しやすい人が選ばれた…ということだと思います。

清貫がどういう人物だったかというと「藤原保則(やすのり)の息子」。

保則は宇多帝が即位した時、親政開始にあたって道真よりも早く、「いの一番」で抜擢したほどの人物でした。
(保則は藤原氏ではありますが「南家」藤原のため傍流も傍流)。

道真の前に讃岐国守も務め、道真が「地方長官の手本」として尊敬していたほどの人物。のち道真とともに改革メンバーとなります。

そんな人物の息子ということで道真とは昵懇だったことでしょう。道真が話しやすい人が選ばれた…と推測する根拠です。

次回のマンガでは、清貫が宮廷に提出した道真の自白レポートについて、個人的な解釈をしてみたいと思います。

■帝からもらった衣

実際に道真は醍醐帝からもらった衣を大事に大宰府まで持ってきていました。

道真が太宰府で詠んだ漢詩に「帝からいただいた衣の香りで都をなつかしむのだ…」というものがあります。紫式部も源氏物語の中で触れるほど有名なエピソードで、絵巻物にも描かれています。

天神絵巻より 都の香りに涙する道真

冤罪で左遷されても帝への忠誠心は変わらない。
そんな美談をもとに「道真=忠臣の象徴」とされ、明治時代には道真は何度も紙幣のデザインになりました。(左に描かれている神社は北野天満宮)

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