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短編小説『変身』

変身

- 体を他のものに変えること。姿を変えること。また、変えた姿。



私はいま電車の中で揺られている。いや。揺れているのほうが正しい。通勤ラッシュ時の満員電車の時もあれば、始発のすっからかんな電車の時もある。こんなにもすぐに簡単にコロコロ雰囲気が変わる場所もないだろう。


電車という密室の中では様々なことが起こる。


乗客同士で揉めていることも多々ある。特に満員電車の時に起きる確率が高い。気がする。原因は様々で、押した押されただの、痴漢されたしてないだの。最初は当事者2人だったものが箱の中を電波のように波及的に広がり、その争いがどうなるのかを見届ける証人となる。私もそのうちの1人だ。ただ関わりたくはない。関われない。


逆にハートフルな現場になることもある。お年寄りに席を譲ったりしていたり、子供と目が合えば変顔をして笑わせる人がいたり。それを見て私は心がホッとするのだ。



かく言う中吊り広告の私はみんなの頭上にいるだけなので、眺めているだけだ。それにしても最近中吊り広告は減った。週間プレイボーイさんの広告もいつのまにか撤去されている。そういえばお別れの挨拶してなかったな。お疲れ様でした。



そういえば次は何に"変身"するのだろうか。



女子更衣室のロッカーにでもなれないかな。何になるか希望は出来ないし、いつ変われるかもわからない。



唯一わかるのは私は男でなおかつ変態だということだ。



(終わり)


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